iDeCoが流行っても俺がやらない理由

2026年12月、iDeCoの掛金上限が大幅に引き上げられる。

現在の月2.3万円が6.2万円になる。

「今すぐやらなきゃ損」「節税しながら老後資金を積み立てられる」という声があちこちで聞こえてくる。FPのブログも、YouTuberの動画も、そろいも揃って「iDeCoは最強の節税ツール」と言う。

俺は一切やっていない。これからもやらない。

別に否定したいわけじゃない。向いている人にはいい制度だと思っている。だが、俺には合わない。その理由を実額と制度の構造で説明する。

目次

iDeCoの「節税効果」が成立する条件

iDeCoの最大のメリットとして語られるのは、掛金が全額「所得控除」になる点だ。たとえば月3万円を掛けると、年間36万円が所得控除として課税所得から引かれる。課税所得300万円の人なら、税率10〜20%として年3.6〜7.2万円の節税になる計算だ。

これが「最強」と言われる理由だ。

だが、ここに見落とされがちな前提条件がある。

「課税所得がなければ、控除は意味をなさない」という単純な事実だ。控除は「課税所得を減らす」仕組みだ。ゼロから引けるものは何もない。

俺の収入構造:全部、非課税だ

俺の月収の内訳はこうなっている。

収入源月換算課税区分
障害厚生年金1級(基本+子の加算+支援給付金)142,692円非課税
労災年金2級172,372円非課税
就業不能保険200,000円非課税
労災介護補償42,700円非課税
月収合計(月換算)約557,764円全額非課税

月55万円を超える収入がある。しかしその全てが課税の対象外だ。

障害年金・労災年金は所得税・住民税が一切かからない。就業不能保険の給付金も原則として非課税だ。これは「節税しなくていい幸運」ではなく、「控除の仕組みが機能しない現実」だ。

具体的に計算してみる

俺がiDeCoに月3万円を掛けたとしよう。年間の掛金:36万円。所得控除として36万円が課税所得から引かれる。

だが俺の課税所得は——ゼロだ(厳密には配当所得が加わる場合があるが、後述する)。

節税額 = 課税所得 × 税率 → ゼロ × 何% = ゼロ円

毎月3万円を掛け続けても、節税効果はゼロ。60歳まで原則引き出しできない制約だけが残る。

俺はそのお金を高配当株に回すことで、年間に換算して約1.5万円以上の配当収入を得られる可能性がある(取得利回り5%、月3万円×12ヶ月=36万円の場合)。手元の自由度を縛ってゼロの節税効果しか得られないiDeCoより、今すぐ配当として返ってくる株式投資の方が、俺の状況に合っている。

「でも運用益は非課税じゃないの?」という疑問に答える

iDeCoには節税メリットがもう一つある。「運用中の利益(分配金・売却益)が非課税」という点だ。通常の特定口座では運用益に20.315%が課税されるが、iDeCoの口座内では非課税のまま再投資できる。

だが、俺には新NISAがある。

新NISAの成長投資枠(年240万円)と積立投資枠(年120万円)、合計年360万円の非課税枠がある。俺の年間投資額はNISA枠で十分に収まる。障害者こそNISAを使い倒せる理由と俺のやり方は別記事にまとめた。iDeCoで別口の非課税枠を確保する必要がない。

そして、これは俺だけの話じゃない。NISAの生涯非課税枠は1,800万円ある。多くの人にとって、一生のうちに投資へ回せる額は、この枠に収まる。つまり「非課税で運用したい」という目的だけなら、ほとんどの人はNISAだけで足りる。iDeCoの非課税枠をわざわざ別に持つ必要があるのは、NISAを使い切るほど投資できる、一部の人だけだ。

結局、iDeCoがNISAより優れている点は「掛金の所得控除」だけだ。その控除が効かない俺には意味がないし、運用枠が目的なら、まずNISA1,800万を埋める方が先だ。

それに、iDeCoは「非課税」じゃない——出口で課税される

よく「iDeCoは非課税でお得」と言われる。だが正確には違う。受け取るとき(出口)に課税される。

60歳以降に受け取るとき、一時金なら「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」が使える。だが、控除を超えた分は課税される。特に、会社の退職金とiDeCoの一時金を近い時期に受け取ると、退職所得控除がダブって使えず、税金が出る(受け取る順番とタイミングのルールがある)。

つまりiDeCoは「全部非課税」じゃなく、「入口で控除して、出口で課税する=税金の繰り延べ」が正体だ。

じゃあ俺はどうか。廃業した個人事業主で、会社の退職金がない。だから退職所得控除を丸ごと使えて、出口の税金は小さい。出口だけ見れば、むしろ俺は有利な側だ。

だが——入口の節税がゼロの俺にとって、iDeCoは結局こうなる。入口の得はない。運用益の非課税はNISAで足りる。出口の得もたいしてない。残るのは、60歳までのロックと、毎月の口座管理手数料だけだ。だからやらない。

3つ目の問題:60歳まで引き出せない

iDeCoは原則として60歳まで引き出しができない。俺は今50歳だ。10年間、資金を拘束される。

俺の生活には「収入の崖」がある。62歳で就業不能保険(月20万円)が終了する。65歳以降は老齢年金が加わるが、62〜65歳の3年間は収入が月20万円以上減る。

この「崖」に備えるための資金を60歳まで拘束される仕組みは、俺のライフプランに合わない。資金の流動性を確保しておくことが、俺にとっては何よりも重要だ。

「配当を確定申告している俺の場合」に例外はあるか

実は俺は配当所得について毎年確定申告をしている。障害年金・労災年金が非課税で課税所得がほぼゼロのため、配当を総合課税で申告すると源泉徴収分が還付される。この場合、配当所得が課税所得として加算される。

2026年の配当予定は税引前約121万円。この課税所得に対してiDeCoの掛金控除を当てることは、理論上は有効だ。ただし話はそれほど単純ではない。

配当を総合課税で申告すると国民健康保険料の算定基礎に加算される。iDeCoで課税所得を下げると国保料を抑える効果は数千〜1万円程度。さらに、NISA移行を進めているため特定口座の配当(課税対象)は今後減っていく。60歳まで拘束されるリスクが依然として残る。天秤にかけた結果、iDeCoはやらないという結論に変わりない。

確定申告と国保料の板挟みの詳細は配当を確定申告する俺が、国保料の板挟みで出した結論にまとめた。

iDeCoが向いている人・向いていない人

ここまで俺の話をしてきた。全員に「やるな」と言いたいわけではない。

向いている人向いていない人
会社員で課税所得が安定してある課税所得がゼロまたはほぼゼロ(障害年金・労災年金のみの受給者)
所得税率が10%以上の年収がある新NISAの年360万円枠で投資が足りている
老後まで使わない余裕資金がある60歳より前に資金が必要になる可能性がある
新NISAの枠では非課税運用が足りない規模で投資している流動性の高い資産を手元に置きたい

俺は右列に全部該当する。制度の良し悪しではなく、「誰に向いているか」の話だ。

俺が代わりにやっていること

iDeCoをやらない代わりに、俺は以下を続けている。

① 新NISA・成長投資枠で高配当株を購入

毎年の非課税枠(成長枠240万円)を使って日本の高配当株を買い続けている。保有銘柄の中心は三菱UFJ・三井住友FG・オリックス・東京海上HD・丸紅など、業績が安定した日本の大型高配当株と中小型株合わせて約50銘柄だ。2026年6月時点の年間配当は税引前約121万円(税引後約101万円)。簿価利回り5.12%。

② 配当を再投資して複利を機能させる

配当をもらいながら障害年金も受け取り続けられる仕組みについても別記事にまとめている。配当金を受け取ったら次の銘柄の購入に回している。60歳まで引き出し不可の縛りはない。必要なときに現金化できる。

③ 現金1,300万円を手元に確保

流動性の確保が最優先だ。iDeCoで拘束するより、手元の現金から必要に応じて株に「移し替える」方が、俺の生活設計に合っている。

まとめ

iDeCoの「節税効果」は課税所得がある人に機能する仕組みだ。

障害年金1級・労災年金2級が非課税で課税所得がほぼゼロの俺には、掛金控除の恩恵がほぼない。新NISAで非課税運用の枠が足りており、60歳まで資金を拘束されることが俺のライフプランに合わない。

「iDeCoをやらない」という選択は、逃げではなく、自分の状況を正確に理解した上での合理的な判断だ。

「みんながやっているから」で動く前に、自分の課税所得がいくらかを確認してほしい。そこから先の答えは、人によって全然違う。


📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた
それでも俺は生きている ― ヘタな仮設屋の、笑えるけど刺さる30年 ―」をnoteで公開中です。
note: hetagorilla

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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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