フラット35か変動か。就業不能保険で考える第三の選択肢

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「固定なら安心」——その安心に、毎月いくら払ってるか知ってるか

これから家を買う人が、必ず一度はぶつかる壁がある。固定金利か、変動金利か、だ。

2026年6月、フラット35(固定)の金利は3.21%まで上がった。前の月から一気に0.5ポイントの上昇だ。「これ以上上がる前に、固定で金利を確定させたい」——そう考えて、固定に傾く人は多いと思う。気持ちはわかる。固定は、借りた瞬間に金利が止まる。先が読める。確かに、安心だ。

だが、ひとつだけ聞きたい。その「安心」に、あなたは毎月いくら払っているか、数字で見たことがあるか。

俺は、6メートルから落ちて職人を廃業した男だ。団信(団体信用生命保険)が降りずに住宅ローンが丸ごと残った経験がある(その話は現場職人が障害になっても月20万もらえた保険の話に書いた)。だからこそ、ローンと保障の「中身」を、人より真剣に考えてきた。今日は、これから借りる人に向けて、その視点をひとつ置いておきたい。

まず、固定と変動の「月の差」を数字で見る

仮に、4,000万円を35年で借りるとする。今の金利で計算すると、こうだ。

金利タイプ金利(2026年6月)毎月の返済額
変動金利約1.0%約11万2,900円
フラット35(固定)約3.21%約15万8,700円
約4万6,000円/月

月4万6,000円。年にすれば約55万円だ。これが、今の金利で「固定の安心」を買うために、変動より多く払う金額になる。

もちろん、これは今の金利の話だ。変動が上がれば、この差は縮む。だが、まず「固定の安心には、これだけのコストがかかっている」という事実を、頭に入れてほしい。

第三の選択肢——浮いた分で、保障を「自分で」持つ

ここで、ひとつの発想が出てくる。

固定を選んで月4万6,000円を「安心料」として払う代わりに、変動で安く借りて、浮いたお金の一部で、就業不能保険を自分で持つ——という手だ。

ここで補うのは、死亡じゃない。死亡は、団信が引き受けてくれる。補うのは「生きて、働けなくなった時」だ。だからここで持つのは「就業不能保険」——働けない間、毎月いくらと給付が出るタイプの保険になる。

まず、保障額の話をしておく。月10万円では、薄すぎる。考えてみてくれ。働けなくなったとき、月10万では、さっきの住宅ローン(月11万〜16万)すら払えない。生活費は、別にかかる。だから俺なら、給付は月20万円で設計する。ローンを払い、その上で家族が最低限暮らせる——これでようやく「収入の代わり」になる。

給付を受け取る期間も大事だ。これは、子どもが独立して、もう自分の収入が要らなくなる歳までに合わせる。プロも、保険期間は「子どもの大学卒業や独立する年齢など、収入が必要な期間に合わせて決めろ」と言う。今の就業不能保険は、満了年齢を「55歳〜70歳の5歳刻み」で自分で選べる商品が一般的だ(昔は1歳刻みで細かく設定できる商品もあったが、今は5歳刻みが主流になっている)。だから、子が独立するのが62歳前後なら、手前の60歳満了か、余裕を見て65歳満了を選ぶ。

そのうえで、月20万円・60〜65歳満了の保険料を見てほしい。男性・非喫煙の場合、だいたいこのくらいが目安だ。

加入年齢月20万円保障の保険料(目安・月額)
30歳約5,000〜7,000円
35歳約5,600〜7,600円
40歳約6,400〜8,600円
45歳約7,600〜10,000円
50歳約9,000〜1万2,000円

(※これは「就業不能保険」=働けない時だけ給付が出るタイプの相場で、死亡保障は付かない。死亡は団信が見る前提だ。金額は保険会社・満了年齢・免責期間・喫煙の有無・精神疾患の保障範囲で変わる。あくまで目安。また給付月額には年収による上限があり、月20万円の保障は、おおむね年収400万円以上が前提になる商品が多い)

保障を月10万から月20万に倍にしたから、保険料も、さっきよりおよそ倍になった。だが、それでも——どの年齢でも、保険料はローンの月4万6,000円の差より、まだ安い。30歳なら月6,000円前後、50歳でも月1万円ちょっとだ。

つまり、変動で借りて月4万6,000円浮かせ、そのうち6,000円〜1万円ちょっとで、月20万円というまともな保障を持つ。それでもなお、固定より月3万円以上、手元に残る計算になる。手薄な月10万じゃなく、ちゃんと収入の代わりになる保障を持ったうえで、だ。数字だけ見れば、これはかなり魅力的に映る。

ただし、この数字には裏がある。表の就業不能保険は、死亡保障が付いていない(死亡は団信が見るから、それでいい)。そして、安いものほど「降りる条件」が狭い。ちなみに俺自身が入っていたのは、死亡保障もセットになった「収入保障保険」(ソニー生命・月15,000円)で、就業不能保険とは別物だった。値段だけで飛びつくな。どの物差しで降りるのかは、次の「落とし穴②」で詳しく書く。

もうひとつ、正直に言う。年齢が上がるほど、この保険料は重くなる。30歳の月6,000円は誤差でも、50歳の月1万2,000円は、35年間払えば総額500万円を超える。若いうちほどこの手は効くし、年を取るほど旨みは減る。ここは冷静に見たほうがいい。

月10万では、ローンすら払えない。持つなら月20万。それでも保険料は、固定の安心料より安い。

——だが、ここで立ち止まれ。3つの落とし穴がある

ここまで読んで「じゃあ変動+保険が正解だ」と飛びついたなら、待ってほしい。俺は、その煽りをやる気はない。正直に、3つの落とし穴を並べる。これを知らずに選ぶと、痛い目を見る。

落とし穴①:変動の「金利上昇リスク」——これが本丸だ

さっきの月4万6,000円の差は、今の金利だから生まれている。変動1.0%、固定3.21%。この差が、まるごと「変動の安さ」の正体だ。

だが、変動は上がる。日銀は利上げ基調で、2026年中にも変動金利がさらに上がる見通しがある。もし将来、変動が3%台まで上がれば、固定との差は消える。下手をすれば逆転する。そのとき、あなたは「安心を捨てて、結局高くついた」ことになる。

固定の3.21%は、この不確実さを金利で買って、消している。変動+保険が得かどうかは、結局「変動がこの先どこまで上がるか」という賭けの上にある。ここが一番大事なところだ。保険が安いかどうかの話じゃない。

落とし穴②:就業不能保険は、団信の「代わり」にはならない

「保険を持てば、フラット35の手厚い団信と同じだ」——これは間違いだ。

フラット35の新機構団信は、身体障害者手帳の1〜2級に該当すれば、ローン残高がまるごと消える(一括完済)。一方、就業不能保険は、働けない間「毎月20万円」のように給付が出る保険で、ローンを一括で消すものじゃない。しかも、給付開始まで60日や180日の待機期間があり、「所定の就業不能状態」の定義(障害等級2級以上、要介護など)も厳しく、うつ病などの精神疾患は対象外や制限つきのことが多い。

俺自身、団信は「高度障害のみ」、自分で入った就業不能保険は「身体障害者手帳の等級」で発動する設計だった。同じ「働けない」でも、降りる物差しが保険ごとにまるで違う。俺の団信が高度障害のみだったから、生きて障害を負ってもローンが残った。降りなかった顛末と、高度障害・身体障害者手帳・障害年金という物差しの違いの詳細は、現場職人が障害になっても月20万もらえた保険の話に全部書いた。大事なのは保険料の安さじゃない。自分が入るものが「どの物差しで降りるのか」を、約款で必ず確認することだ。

落とし穴③:あなたが会社員か自営業かで、必要な備えは全然違う

ここは見落とされがちだが、決定的に重要だ。

会社員なら、働けなくなっても健康保険から「傷病手当金」が出る。給料の約3分の2が、最長1年6ヶ月。さらに条件を満たせば障害年金もある。公的な備えが、そこそこ手厚い。

だが、自営業・フリーランス・一人親方は違う。傷病手当金が、ない。働けなくなった瞬間、収入はほぼゼロ。頼れるのは障害年金くらいだ。

つまり、就業不能保険が本当に効いてくるのは、自営業の人だ。俺も元・建設業の個人事業主だった。だから断言する。自営業で家を買うなら、団信の中身と、自分で持つ保障は、会社員の何倍も真剣に考えないといけない。

じゃあ、これから借りる人は何をすればいいか

正解は人によって違う。でも、今日からできることは決まっている。

ひとつ、自分が借りる予定の額で、固定と変動の「月の差」を実際に計算する。差額を知らずに「なんとなく固定で安心」を選ぶのが、一番もったいない。

ふたつ、候補にしている銀行の団信の約款を、自分の目で確認する。死亡・高度障害だけなのか、疾病や就業不能までカバーするのか。「たぶん降りる」が一番危ない。

みっつ、就業不能保険の見積もりを、一度だけでも取ってみる。保険料は年齢と健康状態でまるで変わる。健康で若いうちほど安く、年を取り健康を崩すと高くなる(or入れない)。だから「自分の数字」を、今知っておく価値がある。

よっつ、自分が会社員か自営業かで、公的な備えがまるで違うと理解する。自営業なら、保障は厚めに考えろ。

固定か変動かは、金利の損得じゃない。「金利が読めない不安に、毎月いくら払えるか」で決まる。

そして、保障を銀行や不動産屋の言いなりで決めるな。団信の中身を開けて見て、足りない分を自分で埋める。それができる人だけが、いざというときに家族を守れる。俺みたいに、団信に間に合わなかった人間が言うんだから、間違いない。知って、動いた人だけが得をする。それだけは、何があっても変わらない。

なお、「すでに借りていて、手元に現金がある。繰上返済すべきか」で悩んでいる人は、配当が住宅ローンの9割を払う話に、俺自身の選択を書いた。そっちも読んでみてほしい。

📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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