投資を始めようとした時、俺は一度だけ本気で怖くなった。
「配当が増えたら、障害年金が止まるんじゃないか」
2021年末に株を買い始めた俺は、障害年金1級を受給しながら、少しずつ投資を続けていた。最初は数十万円の小さな投資だった。でも配当が入るたびに、毎回頭の片隅でその不安がよぎった。「これをやってたら、年金が止まるんじゃないか」と。
同じ不安を持ちながら、投資を諦めている障害者が今この瞬間にも大勢いると思う。この記事は、そういう人に向けて書く。
「配当収入があると年金が止まる」は本当か
結論から言う。止まらない。
これは俺の感想ではなく、障害年金の制度の仕組みとしてそうなっている。
障害年金の審査で問われるのは、「障害の状態が改善したかどうか」と「就労によって収入を得ているかどうか」だ。株の配当金は、就労によって得た収入ではない。配当金とは「株式を保有したことで企業から分配される利益」であり、自分が労働して稼いだ収入とは性質が根本的に異なる。
障害年金の停止や等級の変更が起きるのは、「障害の程度が変わった」と判断される場合だ。株を持っていること、配当が増えたこと、これらは審査の判断材料に含まれない。
⚠️ これは2026年5月時点の制度に基づく説明だ。制度は変わる可能性があるため、重要な判断の前は必ず年金機構か社会保険労務士に確認してほしい。
なぜこの誤解が広がるのか——3つの原因
① 老齢年金の「在職老齢年金」との混同
「収入が増えると年金が止まる」という話は、老齢年金の在職老齢年金制度を指していることが多い。老齢年金は、就労収入が一定額を超えると年金が減額・停止されるしくみを持っている。
しかし障害年金にはこのルールは適用されない。障害年金は「障害の程度に応じて支給される年金」であり、収入額で支給額が変動する制度ではない。老齢年金の話が頭にあると、この混同が起きやすい。
② 「就労収入」と「不労所得」の区別が頭にない
障害年金の支給停止が問題になるのは、「就労が可能なレベルまで障害の状態が回復した」と判断されるケースだ。この「就労」とは体や精神を使って働くことを指している。
配当金・家賃収入・利子などの「不労所得」は、この判断に直接関係しない。稼ぎ方ではなく、障害の程度が判断基準だ。
③ 当事者の実録がない
「障害年金 株 止まる」で検索すると、制度の解説記事は出てくる。でも「実際に数年間投資を続けながら障害年金を継続した人の記録」はほとんど見つからない。制度は正しく理解されていても、実例が見えないから信じられない。それが一番の問題だと俺は思っている。
俺の5年間——これが実録だ
俺が株式投資を始めたのは2021年末だ。足場から6メートル落ちて脊髄を損傷し、両下肢に障害を負って廃業した後、YouTubeで学んで高配当株投資を始めた。障害年金1級と労災年金2級を受給しながら、少しずつ株を買い続けた。
あれから約4年。配当は年間100万円を超え、2026年の実績は税引き前で115万円を超えた。株式資産は4,000万円を超えている。
その間、障害年金1級の認定が取り消されたことは一度もない。
更新審査のたびに、俺は正直に今の状態を書いた。両下肢障害・クラッチ杖使用・無職(廃業)。その内容は変わっていない。障害の状態が変わっていないから、年金も変わらない。シンプルな話だ。
障害年金の詳細については、こちらの記事に書いている。
→ 労災年金と障害年金を両方もらう俺が、それでも投資をやめない理由
半信半疑のまま、最初の株を買った日
最初の株を買うまでの話を書く。
きっかけは2020年のコロナショックだった。株価が一気に下がる様子を見て驚いた。そしてその後、みるみる戻っていく動きにも驚いた。「株というのはこういうものか」と、初めて自分ごとして見た瞬間だった。
そこから調べ始めた。株の仕組み、インデックス投資、高配当株、配当金の受け取り方。そして同時に調べたのが「障害年金を受給しながら株を持っていいのか」という問題だ。ここが難しかった。情報が少ない。「障害年金 株 止まる」で検索しても、はっきりした答えが出てこない。調べれば調べるほど不安になる。
1年かけて調べて、それでもよくわからないまま、2021年にまずインデックスファンドを買った。「おそらく大丈夫なはずだ」という半分賭けのような気持ちだった。そこから米国高配当ETFへ、さらに日本の高配当株へと少しずつ移っていった。
「制度を知らない恐怖」が、俺の資産形成を丸1年遅らせた。この後悔を、同じ立場の人には繰り返してほしくない。
障害年金が本当に止まるケースとは
誤解が生まれないように正確に書いておく。障害年金が停止・減額されるケースは実際に存在する。
- 審査更新時に、障害の状態が改善していると診断書に記載された場合
- 障害の等級に該当しなくなったと判断された場合
- 就労が可能な状態まで回復したと年金機構が判断した場合
これらはすべて「障害の状態に関わること」だ。株を持っているとか、配当が増えたとか、そういうことは一切含まれていない。
俺のケースで言えば、脊髄損傷(腰椎3番・不全麻痺)による両下肢の障害は回復していない。クラッチ杖を使って歩くのが精一杯で、体の調子が悪い日は外出もしない。この状態が変わらない限り、年金の認定は続く。投資口座の残高とは無関係だ。
障害者こそ「非課税の二重構造」を使い倒す
ここまで読んだ人に、もう一つ知ってほしいことがある。
障害年金は非課税だ。老齢年金と違い、所得税の対象にならない。そしてNISA口座の配当収入も非課税だ。
つまり、障害年金(非課税)+NISA配当(非課税)という組み合わせは、税金ゼロで収入を積み上げていける構造だ。これは健常者には簡単には真似できない。障害者であることが、資産形成において逆に有利に働く局面がある。
この「制度の交差点」を知っているかどうかで、同じ障害者でも10年後の資産は大きく変わる。
今日からできる3つのアクション
① 年金機構か社労士に「配当収入と年金の関係」を確認する
制度は変わる可能性がある。まず「自分の状況で、配当収入は年金に影響しますか?」と年金機構か社会保険労務士に直接確認するのが最も確実だ。電話一本で答えが出る。
② 少額から始める——最初の1万円が心理的な壁を壊す
俺が最初に高配当株を数株だけ買ったとき、配当は年数百円程度だったと思う。でも「配当が振り込まれた」という実感が、次のステップへの背中を押してくれた。
SBI証券は口座開設が無料で、1株から購入できる。住信SBIネット銀行と連携させると証券口座への入金が自動化できて便利だ。「やってみたら意外と簡単だった」というのが俺の正直な感想だ。
③ 「完全に理解してから動く」をやめる
俺は1年調べて、その間に障害年金との関係が完全にわかったかというと、そうではなかった。買ってから慌てて調べた方が、圧倒的に頭に入った。「全部わかってから始める」を待っていたら、俺は今も株を持っていなかったと思う。
まとめ——制度を知ることが、行動への第一歩だ
この記事で言いたかったことは一つだ。
「配当収入があっても、障害年金は原則止まらない。」
制度の仕組みとしてそうなっているし、俺の5年間の実録がそれを裏付けている。
知らなかったから怖かった。知ったから動けた。制度を理解することが、全ての出発点だ。
同じ障害を持ち、同じ不安を抱えながら、それでも一歩踏み出そうとしている人にこの記事が届けば、書いた意味がある。
📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた
「それでも俺は生きている ― ヘタな仮設屋の、笑えるけど刺さる30年 ―」をnoteで公開中です。
→ note: hetagorilla

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