令和6年度の障害年金不支給率が13.0%になったというニュースを読んだ日、俺はしばらく画面を見つめたまま動けなかった。
俺自身も2017年に事故で脊髄損傷を負い、社労士なしで障害年金の申請をした人間だ。あの頃の不安を、嫌というほど覚えている。「書類の書き方を一つ間違えたら落ちる」という恐怖。「何が審査員の目に引っかかるかわからない」という焦り。
ただ、この記事を書く前に正直に言っておきたいことがある。
⚠️ 俺の申請は「身体障害・労災認定済みの事故」という、比較的条件が整ったケースだった。
精神障害や、初診日の証明が難しいケースでは、状況がまったく異なる。この記事は俺の体験談であって、「誰でも社労士なしで通る」という話ではない。
今、その恐怖が数字になって目の前に現れた。13%。申請した7〜8人に1人が不支給になっている計算だ。これを読んでいるあなたが申請を控えているなら、あるいは更新が近づいているなら、この記事を最後まで読んでほしい。
なぜ今、不支給率が急増しているのか
厚生労働省の発表によると、令和6年度の障害年金新規裁定請求における不支給率は13.0%だった。前年度の8.4%から4.6ポイント急増している。
背景には、障害年金審査の公正性をめぐる問題がある。年金機構の職員が、医師の出した認定結果を破棄し、別の医師に判定をやり直させていたことが報道で明らかになった。職員に医師の判断を覆す権限はないはずで、これが審査への信頼を大きく揺るがした。これを受けて国は不支給事案の点検を進め、点検済みの1万4,841件のうち444件が「不支給→支給」へと覆った。この444件は2026年6月の支給分から救済される。
| 年度 | 新規裁定請求 不支給率 |
|---|---|
| 令和4年度 | 約7.2% |
| 令和5年度 | 8.4% |
| 令和6年度 | 13.0%(急増) |
📌 13%は全体の平均値。障害の種類によって状況は大きく違う。
身体障害(特に事故・外傷など原因が明確なもの)は比較的審査の見通しが立ちやすい。
一方、令和6年度は内部障害が20.6%と最も高く、精神障害は12.1%だった。精神障害は症状の可視化が難しく、診断書の書き方による影響が結果を左右しやすい。
自分がどちらに近いかによって、対策の重みが変わってくる。
もう一つ、背景として知っておいてほしいことがある。
精神障害の認知が社会的に広まるにつれ、障害年金の新規請求件数は年々増え続けている。いまや全体の請求件数の中で精神障害が占める割合は非常に大きくなった。請求が増えれば、年金財政への影響も当然大きくなる。
国にも予算がある。 支出が膨らめば、審査の運用は厳格化される。これは障害年金に限った話ではなく、公的制度全般に共通する現実だ。「審査が厳しくなった」という現象の裏には、こうした構造的な背景がある。
これを「国が意地悪をしている」と読むのは違う。ただ、制度を使う側も「審査される立場にある」という事実を正確に理解した上で準備する必要がある、ということだ。書類の質が問われる時代になったのは、こうした背景もある。
不支給になりやすい3つのパターン
俺自身の申請体験と、専門家の情報から見えてくる「不支給になりやすいパターン」を書く。
① 初診日の証明が取れない
障害年金申請の最初の難関は「初診日」の証明だ。カルテの保存期限は原則5年。廃業・閉院した病院のカルテはほぼ残っていない。証明書が取れなければ申請自体が前に進まない。
俺の場合は2017年の事故で、入院先も主治医も明確だった。だが「10年前の最初の通院先」という状況になると、証明は一気に難しくなる。若い頃に何となく受診した病院が、今は廃業していることは珍しくない。
精神障害の場合はさらに難しい。うつや不安障害は「ある日突然始まった」ものではなく、長年かけて悪化するケースが多い。「本当の初診日」がどこかを特定すること自体が、専門的な判断を要する場合がある。
② 診断書と申立書の内容が一致していない
これが最大の落とし穴だと俺は思っている。
診断書は医師が書く。病歴・就労状況等申立書は本人が書く。この2つが「同じ症状・同じ生活実態」を示していなければ、審査員の目には「どちらかが正確でない」と映る。
診断書と申立書は、セットで一つの物語を作らなければならない。矛盾があれば、それだけで不支給になりうる。この「整合性の確認」が一番重要なのに、一番やり忘れられる作業だ。
③ 日常生活能力が「軽く」記載されている
医師は「できることを書く傾向がある」と言われる。患者が「なんとか動けます」と言えば、そのまま記載する。しかし障害年金の審査は「良い日」ではなく「生活の実態」で判断されるべきものだ。
「週に3日は外出できない」「食事の準備ができない日が月に10日以上ある」——こういう実態が診断書に反映されていなければ、等級は下がる。診察室での姿と、自宅での実態にはギャップがある。そのギャップを伝える工夫が必要だ。
社労士に頼るべきか——正直に書く
この記事の本題の前に、まずここを書かなければならない。
俺は社労士なしで申請した。それは事実だ。しかしそれが「正解」だったかどうかは、今でもわからない。
社労士に頼ることは、決して「負け」でも「面倒くさがり」でもない。むしろ、自分の障害の性質や状況によっては、社労士に頼ることが最善の判断になる。
社労士への相談を強く勧めるケース
- 精神障害・発達障害・知的障害の申請:症状の可視化が難しく、診断書の記載内容が結果を大きく左右する。専門家の目が入ることで、見落としを防げる。
- 初診日の証明が難しいケース:廃業した病院・複数の医療機関をまたぐ場合、証明書の取得だけでも専門的な対応が必要になる。
- 過去に不支給・却下になったことがある:一度落ちた申請を再申請するのは、より難しい。同じ書き方では通らない。
- 「自分の状態を言葉にするのが苦手」と感じる場合:申立書の精度が結果を左右する。言語化が得意でない人は専門家に任せた方が安全なことが多い。
- 複数の障害が重なっている場合:どの障害を主軸にするか、どう組み合わせるかは判断が難しい。
障害年金専門の社労士に相談すると、初回相談は無料のことが多い。成功報酬型(受給決定後に年金の一部を報酬として支払う)の事務所も多いため、費用面のハードルは以前より下がっている。
「一人で頑張ること」に価値があるのではない。適切な支援を活用して、受け取れるべき年金を確実に受け取ることが大切だ。
俺が申請で意識したこと——体験談として読んでほしい
ここからは俺自身の体験を書く。繰り返しになるが、俺のケースは「足場からの転落事故・脊髄損傷・労災認定済み」という、障害の原因が明確な身体障害だった。同じやり方が全員に当てはまるわけではない。参考として読んでほしい。
やったこと①:「悪い日」を記録していた
入院中から、「今日は何ができなかった」を日記に書いていた。「歩行補助なしでは5メートル移動できない」「トイレに一人で行けない」「着替えに20分かかる」——細かい数字と事実を積み上げた。
申立書はこの記録をそのまま落とし込んだ。感情的な訴えではなく、事実の積み重ねだ。審査員は「かわいそう」で審査するのではなく、「どこまでできないか」で審査する。
やったこと②:医師に「実態メモ」を渡した
診断書をお願いするとき、俺はA4用紙1枚に「日常の実態メモ」を作って医師に渡した。診察室で見せる姿と、家での実態のギャップを埋めるためだ。
「外来診察時は気力を絞って来院しています。しかし帰宅後は必ず横になる必要があります」という書き出しで始めた。そして「できないこと・かかる時間・頻度」を箇条書きにした。医師は忙しい。「見えていないこと」は書けない。見せなければ伝わらない。
やったこと③:診断書と申立書を一字一句照らし合わせた
診断書が出来上がったとき、俺は申立書と並べて「矛盾がないか」を確認した。「診断書に記載されている症状が、申立書にも一貫して反映されているか」を一つひとつ確認する。これは社労士に依頼した場合でも、本人が必ず確認すべき作業だと俺は思っている。
詳しい申請の手順全体は障害年金を自力申請して審査を通った俺の記録にも書いた。申請の流れ・審査対策・等級の実態をそのまま公開している。
今すぐできる3つの対策
不支給率13%という数字が怖くても、今日から動けることはある。
対策①:初診日の証拠を今すぐ固める
まだ申請を考えていない段階でも、初診日の証明は「今」やっておく価値がある。受診した病院名・日付・診断名を手帳に書いておくだけでもいい。病院が廃業する前に「受診状況等証明書」を取得しておくとさらに確実だ。「後でやろう」では間に合わない。
対策②:普段の「最悪の状態」を文書にしておく
診察時だけで医師が「日常生活の実態」を把握することは難しい。月に数回、「今日はここまでしかできなかった」という記録をつける習慣を持つだけで、申請時の書類の精度が大きく変わる。記録がないと、申立書に書くべき「事実」が思い出せなくなる。
対策③:迷ったら社労士の無料相談を使う
「自分で申請できるか自信がない」と感じるなら、まず無料相談を使ってみてほしい。社労士に依頼するかどうかは相談後に決めればいい。障害年金専門の社労士は、初回相談を無料で受け付けているところが多い。
相談することで方針が見えてくる。「これなら自分でできる」と判断してから自力申請するのも、「プロに任せた方が確実」と判断して依頼するのも、どちらも正解だ。一人で抱え込まなくていい。
まとめ——制度は使い方を知ることから始まる
障害年金の審査は、年々「書類の質」で結果が変わる時代になっている。
不支給率13%という数字が示しているのは、「制度がなくなった」ということではない。「丁寧に書いた人が通り、雑に書いた人が落ちる」という現実だ。そしてその「丁寧さ」を担保する手段として、社労士という選択肢は十分に有効だ。
俺は一人で申請して通った。しかしそれは、俺のケースが比較的条件の整った身体障害だったからでもある。「社労士なしで通った」という話を、そのまま自分に当てはめないでほしい。
大切なのは等級の数字ではなく、自分の実態に合った等級で、確実に受給を続けることだ。そのために何が必要かを判断するのが、制度を知るということだと思っている。
障害年金を受け取りながら株の配当も得ることができる仕組みについては、株で年100万の配当をもらっても障害年金が止まらない理由でも書いた。また、障害1級で受けられる優遇制度の全体像は障害1級が受けられる優遇・減免制度を全部書くにまとめている。制度を知ることが、自立の第一歩だ。
📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円超——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた
「それでも俺は生きている ― ヘタな仮設屋の、笑えるけど刺さる30年 ―」をnoteで公開中です。

コメント