62歳。ある日、その数字を計算したとき、俺は手が止まった。
障害年金1級と労災年金で月約30万円。就業不能保険が月20万円。合計で月50万円の収入がある。制度に守られている。老後の心配なんてない——そう思っていた。
でも計算してみたら、62歳で就業不能保険が終了し、一夜にして月20万円が消える。年間240万円の穴が、制度によって開く。
その日から俺は本気でNISAと向き合い始めた。「障害者だからNISAは関係ない」と思い込んでいた俺が、だ。
「障害者にNISAは関係ない」は最大の誤解だ
障害者の収入は、制度に依存しているという本質的な弱さがある。
年金は制度改正のたびに揺れる。就業不能保険には満了年齢がある。障害認定の等級だって、俺自身が「リハビリを頑張ったら等級が下がるのか」と悩んだように、永遠に保証されるわけじゃない。
制度に守られているように見えて、俺たちは一番リスクを抱えている。
だからこそ、自分でコントロールできる収入源が必要だ。NISAは、そのための最強ツールだと俺は思っている。
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なぜ障害者はNISAを活用しないのか――原因3つ
原因①「自分には関係ない」という思い込み
障害年金を受けていると、「投資は元気な人がやるもの」という意識が生まれやすい。俺も廃業直後はそう思っていた。事故で6メートルから落下して脊髄を損傷し、廃業を決めた後、投資を始めるまでに2年かかった。その2年間は完全に停止していた。
正直に言う。あの2年間に始めていれば、今頃さらに1,000万円は違っていたかもしれない。「障害者には関係ない」という思い込みが、俺から2年分の複利を奪った。
なぜ2022〜2023年は特定口座だったのか——旧NISAの限界
「なぜNISAを使わなかったのか」と思う人もいるだろう。誤解のないように言っておく。使わなかったのではなく、使えなかったのだ。
旧NISAには「積立NISA」と「一般NISA」の2種類があった。俺は積立NISAでVTI(全米株式インデックスファンド)を積み立てていた。だが積立NISAの対象は長期投資向けの投資信託に限られていて、VYMやSPYDといった高配当ETF、三菱UFJや丸紅といった個別株は対象外だった。
一般NISAなら高配当株も買えたが、年間上限は120万円。当時、職人時代に貯めた現金を段階的に株式に移していた俺には、その枠では到底足りなかった。結果として高配当株はほぼすべて特定口座で買い続けた。
「NISAを使わなかった怠慢」ではなく「旧NISAでは高配当株投資に制度が追いついていなかった」というのが正確な話だ。
それが2024年、新NISAの登場で一変した。成長投資枠が年間240万円・生涯1,200万円に拡大され、高配当株・ETFが堂々とNISA口座で買えるようになった。俺にとっては制度の革命だった。上の配当推移の表を見てほしい。2024年からNISA口座での配当が始まり、2025年には16.3万円が非課税で手元に残るようになっている。
原因②「障害者の非課税制度」との混同
障害者手帳があると「障害者少額貯蓄非課税制度(マル優)」が使えると思っている人がいる。でもこれは普通預金や国債の利子を非課税にするものだ。株の配当や売却益とは全く別の話で、NISAとも異なる制度だ。
俺も長い間この2つを混同していた。「マル優があるからNISAは要らない」と思い込んでいたが、それは大きな間違いだった。マル優の対象は預貯金の利子。NISAは株・ETFの配当と値上がり益が非課税になる。用途が全然違う。
原因③「元本がない」という先入観
障害者は収入が限られるから投資元本が作れない、と思いがちだ。でも月10万円の余剰があれば、年間120万円だ。10年で1,200万円になる。配当再投資の複利効果を入れれば、それ以上になる。
「ない」のではなく「使い方を知らないだけ」だったりする。
俺のNISA活用術と具体的な数字
本格的に配当投資を始めてからの、年間受取配当金の推移はこうだ。
| 年 | 年間受取配当(概算) | うちNISA非課税分 |
|---|---|---|
| 2022年(本格スタート) | 約30万円 | 0円 |
| 2023年 | 約60万円 | 0円 |
| 2024年 | 約84万円 | 約2.5万円 |
| 2025年 | 約84.7万円 | 約16.3万円 |
※SBI証券・旧SBIネオモバイル証券の年間取引報告書をもとにした実績値。2024年からNISA口座での受取が始まった。なお俺の株式資産のほとんどは特定口座での運用で、NISAへの移行は毎年少しずつ継続している。
2025年の年間配当実績は、特定口座とNISA口座を合わせて約84.7万円(特定口座68.5万円+NISA口座16.3万円)。目標は年間200万円(月換算約16.7万円)だ。これが達成できれば、62歳で22万円が消えても、その大部分を配当で補える計算になる。
制度の崖は、配当という梯子で渡る。それが今の俺の計画だ。
俺のNISAの使い方(成長投資枠メイン)
新NISAは「成長投資枠(年間240万円・生涯1,200万円)」と「つみたて投資枠(年間120万円・生涯600万円)」の2本立てだ。生涯非課税枠は合計1,800万円になる。
俺の場合は高配当株投資がメインなので、成長投資枠で個別株やETFを買うのが基本戦略だ。具体的な保有銘柄はこうだ。
- VYM(バンガード米国高配当株式ETF):メインの配当源。米国の高配当企業400社以上に分散投資できる
- VIG(バンガード米国増配株式ETF):長期的な増配を狙う。配当金が毎年少しずつ増える設計になっている
- SPYD(SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF):高利回りで配当補完
- 日本株個別銘柄:三菱UFJ、三井住友FG、オリックス、東京海上HD、丸紅などを中心に35銘柄以上
NISAで配当が非課税になる破壊力
配当金に対する税率は通常20.315%だ。年間84.7万円の配当なら、本来17.2万円近くが税金として引かれる。NISAに移せば、その分が丸ごと手元に残る。
「17万円の節税」ではなく「17万円の収入増」だ。
これを毎年繰り返すだけで、10年・20年で200万円〜300万円の差になる。障害者で収入が限られているからこそ、この非課税メリットを最大限に使い倒すべきだと俺は思っている。
ちなみに俺は障害者手帳を持っているが、配当所得は所得税の「障害者控除(27万円)」の対象外だ(給与所得や事業所得が対象)。だからこそ実は確定申告で総合課税を選択すれば、配当所得にも障害者控除(27万円・特別障害者は40万円)が適用でき、源泉徴収された税金の一部が還付されるケースもある。ただし合計所得によっては国民健康保険料が増えるなど逆効果になる場合もあり、計算が複雑だ。NISAは非課税が確実で仕組みも単純。障害者が配当の税負担を下げる手段として、最もシンプルで確実なのがNISAだ。
今日からできる具体的アクション3つ
STEP1:NISA口座を開く(まだ持っていない人)
SBI証券か楽天証券でNISA口座を開設する。手続き自体はスマホがあれば30〜60分で完了する。俺はSBI証券をメインにしている。日本株・米国ETFの両方が充実していて、NISA口座での米国ETF購入時のコストが低いからだ。
楽天ポイントを使っている人や楽天カードで積立をしたい人は楽天証券でもいい。大事なのはどこで開くかより、とにかく早く始めることだ。
STEP2:成長投資枠でVYMを1株だけ買ってみる
「なんとなく難しそう」という壁を壊すには、まず小さく始めることだ。VYMは数万円から1株買える。株価と為替により変動するため、正確な金額は証券口座で確認してほしい。「これで非課税配当が手に入った」という実感が、次の行動につながる。
STEP3:特定口座の高配当株をNISAに移す計画を立てる
既に特定口座で高配当株を持っているなら、売却してNISAで買い直すことを検討する価値がある。含み益がある場合は売却時に課税されるため注意が必要だが、長期保有目的の銘柄はNISAに移したほうが、生涯の受取配当額が増える可能性が高い。
俺は毎年少しずつ特定口座からNISA口座へ移す作業を続けている。急ぐ必要はないが、1年1年が積み重なる。
まとめ:障害者だからこそ、NISAをやれ
障害者の収入は制度に守られている。でも、制度は永遠じゃない。62歳の崖もあれば、等級の見直しリスクもある。障害年金の改定は毎年ある。
俺が高配当株投資×NISAにこだわる理由はひとつだ。「自分でコントロールできる収入源」を作ること。4,169万円の株式資産から年間84.7万円の配当が入ってくる仕組みは、誰も奪えない。制度の崖が来ても、配当が途切れることはない。
制度は守ってくれる。でも守り切れない部分を埋めるのは、自分だけだ。
📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた
「ヘタゴリラ一代記」をnoteで公開中です。
ブログではバラバラに書いてきた話が、
時系列でつながります。
→ note: hetagorilla

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