【障害者のリアル指南書③】この先どうなるか——介護が必要になった時、誰もが使える選択肢と費用の全部

📚 障害者のリアル指南書【全3回】

📋 この記事の内容

  • 障害者が将来使える選択肢——在宅・施設の4種類
  • 費用の現実——「お金がなくて入れない」はほぼ起きない
  • 障害者施設と特養の違い・65歳の壁
  • 施設の種類・費用・待機状況を一覧で整理
  • 労災がある人だけが使えるケアプラザ
  • 今から動けること——4つだけ
目次

「妻にとって、これは”拷問”だな」

入院中、病室の天井を見上げながら、そう思った。

6メートルから落ちて脊髄を損傷した俺は、フル介護状態だった。寝返りも、排泄も、食事も、何ひとつ自力ではできなかった。おむつを交換してもらうたびに、「俺は汚物みたいな存在なんや」と思った。看護師さんがプロだと分かっていても、そう感じずにはいられなかった。

小学校に入ったばかりの長男、まだ甘えたい年ごろの双子。その子たちを抱えながら、寝たきりの夫の世話もする妻の姿を想像するだけで、胃が縮んだ。

「ただ生きているだけで、誰かの時間と手間と気力を奪う存在」

その感覚が、今も俺の行動の原動力になっている。

毎日の筋トレ。リハビリ。車椅子の方が楽でも、クラッチ杖にこだわる理由。全部ここから来ている。家族に、あの地獄をもう一度経験させたくないからだ。

でも10年やって分かったことがある。

麻痺した部分は、回復しない。

上半身ばかり鍛えた結果、下手なゴリラみたいな体になった。それがこのブログ名の由来だ(笑)。加齢とともに上半身の力も落ちる。いつかクラッチ杖での生活が難しくなる日が来るかもしれない。

だから、将来を真剣に考えた。「その時、どうなるのか」を。

調べて分かったのは——制度は思ったよりずっと手厚かった。そして知らないと、致命的に損をするルールがあった。

この記事は、俺と同じ不安を持つ障害者と、その家族へ向けて書く。


家族へ——「施設に入れる」は捨てることじゃない

まず家族目線の話をする。

「いつか介護が必要になったら、自分が面倒を見なければ」と思っている配偶者や子どもは多い。俺の妻もそうだと思う。でもそれは、本人にとっても家族にとっても、正解じゃないことがある。

俺が入院中に感じた屈辱は、「愛する家族に世話をされること」への恐怖でもあった。プロの看護師でさえ心が折れそうになったのに、妻や息子たちに毎日介護してもらう生活は——想像するだけで申し訳なくて、消えたくなる。

施設という選択肢は、「捨てること」ではない。「家族を守ること」だ。

制度を使えば、家族の負担は大幅に減らせる。本人も家族も、それぞれの人生を生きられる。そのためにこそ、制度を知っておく必要がある。


障害者が将来使える選択肢——4つ整理する

①在宅で続ける——居宅介護

ヘルパーが自宅を訪問して介護するサービス。食事・排泄・入浴の介助、家事援助、通院介助など、日常生活に必要な支援を受けられる。

費用

サービス料は利用量の1割負担。ただし所得に応じた負担上限額があり、低所得者(住民税非課税世帯)は実質無料だ。

負担上限月額
 生活保護世帯 → 0円
 低所得(非課税)→ 0円
 一般1(収入概ね300万以下)→ 9,300円
 一般2(収入概ね670万以下)→ 37,200円

「少しだけ手伝ってほしい」という段階から使える。自宅での生活を続けながら、必要な分だけサービスを入れる形だ。

②在宅で続ける——重度訪問介護

重度の肢体不自由者を対象にした長時間・常時介護サービス。24時間365日対応も可能で、食事・排泄・入浴・家事・外出・見守りまで包括的にサポートしてくれる。

対象:障害支援区分4以上が目安(常時介護が必要な状態)

費用

低所得者:自己負担なし。最大でも月37,200円が上限。24時間介護でも上限以上の負担は発生しない。

これは重要だ。24時間介護でも月の上限は37,200円。それ以上の負担は制度上発生しない。「お金がかかりすぎる」という心配は、ここでは当てはまらない。

③施設に移る——グループホーム(共同生活援助)

障害者が数人で共同生活を送る小規模な住居。スタッフが夜間や休日の生活支援・介護を提供してくれる。

費用

サービス料:低所得者は無料。家賃:月1万円まで国の補助あり(特定障害者特別給付費)。食費・光熱費:実費(施設による)。

完全な施設入所より自由度が高く、地域の中で生活を続けられる。「完全に施設に入るのはまだ早い」という段階にちょうどいい選択肢だ。

④施設に移る——障害者支援施設(入所)

重度障害者が24時間介護を受けながら生活する施設。日中は生活介護、夜間は施設入所支援を受ける。

費用(ここが一番重要)

費用の種類内容
サービス料住民税非課税世帯(大多数)は無料
食費・光熱水費補足給付制度で調整
手元に残る額障害年金2級→25,000円以上 / 1級→28,000円以上

「お金がなくて施設に入れない」はほぼ起きない。

調べて分かったが、障害者支援施設の利用者のほとんどが住民税非課税世帯に該当するため、サービス料は無料だ。食費・光熱費も補足給付制度で調整される。障害年金2級を受給していても、施設入所後に手元に25,000円以上が残るよう制度が設計されている。

怖いのは「お金」ではなく、「知らないこと」だ。


「お金の心配はほぼいらない」という現実

サービス対象費用の目安
居宅介護在宅・軽度〜中度低所得は無料〜上限9,300円
重度訪問介護在宅・常時介護必要低所得は無料〜上限37,200円
グループホーム比較的自立した生活サービス料無料+家賃・食費(補助あり)
障害者支援施設重度・24時間介護実質障害年金で賄える

制度は思ったよりずっと手厚い。「障害者になったら、将来どうなるか分からない」という漠然とした不安の大部分は、知識で解消できる。


まず整理する——障害者施設と特養は全く別の制度だ

ここを混同している人が非常に多い。だから先に整理しておく。

判断基準が根本的に違う

障害者施設(グループホーム・障害者支援施設)
 → 使う制度:障害福祉サービス
 → 判断基準:障害支援区分(1〜6)
 → 対象年齢:原則65歳未満
 → 申請窓口:役所(障害福祉課)
 → 費用:低所得者はほぼ無料
特養(特別養護老人ホーム)
 → 使う制度:介護保険サービス
 → 判断基準:要介護度(1〜5)
 → 対象年齢:原則65歳以上
 → 申請窓口:役所(介護保険課)
 → 費用:月8〜14万円程度

「障害支援区分」と「要介護度」は全く別の基準だ。

65歳を境に判断基準が変わる

これが「65歳の壁」の本質だ。

64歳まで
 →「障害支援区分」で判断
 → 障害福祉サービスを使う
 → 費用:低所得者はほぼ無料
65歳になった瞬間
 →「要介護度」で判断に切り替わる
 → 介護保険サービスが優先される
 → 費用:1割負担が発生する
 → 月15,000〜20,000円の負担増が普通

65歳になると障害支援区分は関係なくなる。新たに「要介護認定」を受けて、介護保険の世界で動くことになる。

「障害支援区分は65歳で消滅するのか」という疑問

これはよくある誤解なので整理しておく。

正確には「消滅する」のではなく「使えなくなるサービスが増える」だ。

65歳になると使えなくなるもの
 → 就労系サービス(就労移行・A型・B型)
 → 新規の重度訪問介護
  (65歳前から使っていれば継続利用は可能)
 → 新規のグループホーム
  (身体障害者のみ。知的・精神障害者は65歳以降も新規入居可)
65歳以降も使えるもの
 → グループホーム・障害者支援施設
  (65歳前から入所していれば継続利用できる)
 → 介護保険では代替できない障害特有のサービス

身体障害者のグループホーム入居条件

原則:65歳未満
ただし以下のどちらかを満たせば65歳以上でも入居できる
 → 65歳になる前日までに障害福祉サービスを利用したことがある
 → 65歳になる前日までにグループホームに入居していれば継続利用できる
65歳以降に初めて動き出した場合
 → 新規入居は原則できない
 → 介護保険(特養27万人待ち)に並ぶしかない
知的障害者・精神障害者の場合
 → 年齢制限なし・65歳以降でも新規入居できる

つまり身体障害者は65歳前に何らかの障害福祉サービスを使った実績があればセーフ。何も使わないまま65歳を迎えると、選択肢が大幅に狭まる。

「障害福祉サービス」にはA型などの就労も含まれる

A型・B型・就労移行支援は全て「障害福祉サービス」に含まれる。

つまり俺がかつてA型を使っていた実績は「障害福祉サービスを利用したことがある」という条件を満たしている。65歳以降もグループホームへの新規入居が可能な条件は、すでに持っている。

今何も使っていない人は「今すぐ使い始める」ことに意味がある

これが最も重要なメッセージだ。

現在、障害福祉サービスを一切使っていない身体障害者の方——その状態のまま65歳を迎えると、グループホームへの新規入居資格を失う可能性がある。

逆に言えば、今から何か一つでも使い始めれば、その実績が将来の選択肢を守ることになる。

「使い始める」のハードルは低い
 → 相談支援事業所とつながるだけでもOK
 → 居宅介護を月1回だけ使うだけでもOK
 → 障害支援区分の認定を受けるだけでもOK
 → A型・B型などの就労サービスを使うのも当然OK

俺自身、この事実を今回初めて整理して知った。

一番シンプルな理解はこれだけでいい。

身体障害者は65歳が期限。
それまでに動いた人と動かなかった人で
将来の選択肢が制度上、完全に変わる。

これだけは知っておけ——「65歳の壁」と早めに動く理由

障害福祉サービスは原則65歳未満が対象だ。65歳以降は介護保険が優先される。

65歳前に入所していた場合
 → 65歳以降もそのまま継続利用できる
 → 費用も障害福祉サービスの格安料金のまま
65歳以降に新規入所しようとした場合
 → 障害者支援施設への新規入所は原則できない
 → 特養(全国27万人待ち)に並ぶしかない
 → 費用負担も大幅に増える

同じ障害者でも、65歳前に動いたかどうかで、将来の選択肢が全然違う。

施設の種類・費用・待機の現実を一覧で整理する

施設対象月額費用の目安待機の深刻さ
特養(従来型・多床室)65歳以上・高齢者8〜9万円全国27万人待ち
特養(ユニット型個室)65歳以上・高齢者12〜14万円同上
障害者支援施設障害者(原則65歳未満)実質3〜4万円都道府県が毎月公表するほど存在
グループホーム(障害者)障害者(原則65歳未満)補助後3〜4万円地域差が大きい
ケアプラザ労災等級1〜3級のみ月3.6万円程度対象者が限定的

※ 上記の費用はあくまで目安。施設の種類・地域・個人の収入状況によって異なる。実際の金額は市区町村の窓口または各施設に確認すること。

「費用が安い施設ほど、障害者向けの施設だ」という事実がある。

そして65歳を過ぎて障害者向け施設に新規入所しようとすると、原則できない。

65歳前に動かないと、実際に何が起きるか

これは「理論上の話」ではない。

岡山市に住む重度障害者が65歳になったとき、それまで利用していた障害福祉サービスが65歳の誕生日前日に打ち切られ、介護保険への切り替えを求められた。介護保険では同等のサービスが受けられず、一時的に「死の危険」に陥った。実際に訴訟になった事案だ。

制度の問題は机上の空論ではない。

50歳以上は入所要件が緩和される

通常、障害者支援施設への入所には障害支援区分4以上が必要だ。しかし50歳以上になると区分3以上で入所できるよう要件が緩和される。

49歳以下:障害支援区分4以上が必要
50歳以上:障害支援区分3以上で入所できる

俺は今50歳。他人事ではない。


労災がある人には、さらにケアプラザという選択肢がある

仕事中の事故で労災認定を受けた障害者には、「ケアプラザ(労災特別介護施設)」という専用施設がある。

厚生労働省が全国8か所に設置。脊髄損傷など労災特有の障害に特化した専門ケア。看護師常駐・期間制限なし・リハビリも可能。費用:実質月3万6千円程度(低所得者)。

そしてもう一つ。労災サポートセンターの支援員が年に数回、自宅まで訪問してくれる。ケアプラザの存在を知ったのも、その訪問がきっかけだった。

「労災はほんと神だ」と、心から思う。

今は自立生活を続けているが、将来の「保険」として持っていられることが、精神的な安定につながっている。

ケアプラザにも空き待ちは起きる

全国8か所・各施設の定員は100人程度。総定員は800人ほどしかない。ただし特養(27万人待ち)とは状況が違う。入所条件は「労災等級1〜3級」という厳しい条件があるため、競争相手となる対象者がそもそも少ない。

最も確実な対策は「今から労災サポートセンターの支援員に確認しておくこと」だ。

労災認定を受けていない障害者には、この選択肢がない。仕事中の事故や病気が原因で障害を負った人は、労災申請を絶対に後回しにしないでほしい。


今から動けること——4つだけ

①障害支援区分の認定を受けておく

認定がなければ、どのサービスも使えない。今の状態で申請しておくことが、将来の入り口を開けることになる。

役所(障害福祉課)に「障害支援区分の認定を受けたい」と伝えるだけでいい。

②相談支援事業所とつながっておく

相談支援事業所は就労だけでなく、将来の介護サービスの計画書も作る。つまり就労から介護まで、一生付き合う存在だ。

障害者が制度を使い続ける上で、一番重要な判断は「どの相談支援事業所を選ぶか」だ。

③家族と一度、話しておく

「施設に入ることは悪いことじゃない」「制度を使えば家族の負担は大幅に減る」——この話を、今のうちに家族としておく。

いざという時に感情論になりやすい話題だからこそ、元気なうちにしておく必要がある。

④障害者福祉の案内冊子を毎年確認する

都道府県や市区町村は毎年、「障害者のしおり」「障害福祉サービスガイド」などの名称で、制度・給付金・優遇措置をまとめた冊子を発行している。

知らなかっただけで、ずっともらえていなかった給付金がある——そういうことが実際に起きている。

役所(障害福祉課)の窓口に行けばもらえる。最近はホームページからPDFでダウンロードできる自治体も多い。


まとめ——知識が、将来の選択肢を増やす

「知識があれば、あの絶望は少し違っていたかもしれない」

労災があってもなくても、日本の制度は障害者の将来をちゃんと支えるように設計されている。

あとは知るかどうかだけだ。

65歳前に動いた人と、動かなかった人では、将来の選択肢が制度上全然違う。50代で要件が緩和される事実もある。「まだ先の話だ」と思っているなら、それが一番危ない。

相談支援事業所に今日電話する——それだけで、未来は変わり始める。


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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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