【障害者のリアル指南書②】働き出すまでの選択肢を全部教える——相談支援・就労移行・A型B型の違い

📚 障害者のリアル指南書【全3回】

📋 この記事の内容

  • ハローワークで職業訓練を断られた理由
  • 職業訓練と就労移行支援——窓口が違う別の制度
  • なぜA型ばかり勧めてくるのか——3つの構造的理由
  • 本当の窓口は役所(障害福祉課)だ
  • 相談支援事業所の正体と選び方
  • 就労移行支援・A型・B型の違いを一気に整理
  • IT系・在宅系A型という選択肢
  • 動き出すための3ステップ
目次

「どこに行けばいいか分からない」——それが一番きつい

障害を負って「さあ働こう」と思った時、最初にぶち当たる壁がこれだ。

窓口が多すぎて、どこに何を相談すればいいのか分からない。相談支援事業所ってどこ?就労移行支援と就労継続支援の違いは?A型とB型って何が違うの?

仕組みを知らないまま動くと、俺みたいに「あとで選択肢の存在を知る」羽目になる。

俺は40代で6メートルの高さから落下して脊髄を損傷した。廃業・障害者認定を経て就労支援を使おうとした時、ハローワークに行ってそのままA型に直行した。就労移行支援という選択肢の存在すら知らなかった。担当の相談支援事業所にはIT系の就労先がなかった。後から調べて初めて存在を知った。

選択肢は確かにあった。ただ、誰も教えてくれなかっただけだ。

この記事では、障害者が働き出すまでに通る「制度の地図」を全部開示する。


なぜハローワークで職業訓練を勧めてもらえなかったのか

まず俺の実体験を話す。

障害を負って社会復帰しようとした時、最初にハローワークに行った。「働くならハローワーク」という感覚で動いた人間は、俺だけじゃないはずだ。

まず障害者を募集している一般企業を探したが、当時の俺には見つけられなかった。そこで職業訓練校に通えないか相談してみた。

担当者の反応は、あまり良いものではなかった。

「難しいかもしれない」というニュアンスで、消極的な雰囲気だった。その後、別の部署に回されて、A型を勧められた。

「俺が邪魔扱いされたのか?」と思った。でも後から分かった。これは俺個人の問題じゃなく、制度の構造上の必然だった。

俺がハローワークに行ったのは、純粋に就職先を探すためだった。

障害者雇用枠で取ってくれる企業があるだろう——そう思っていた。今思えば甘い考えだったが、当時はそれが普通の発想だった。しかし現実は違った。なんのスキルもない中高年の障害者を雇ってくれる企業の求人は、見つけられなかった。

そこで職業訓練を相談した。「スキルがないなら、まず身につけるしかない」という発想だ。

でもここで壁にぶつかった。

職業訓練と就労移行支援——似ているが全く別の制度だ

職業訓練(ハロートレーニング)
 → 管轄:ハローワーク(厚生労働省・雇用部門)
 → 対象:求職者全般(障害者向けコースもあり)
 → 申請:ハローワーク経由
就労移行支援
 → 管轄:役所(障害福祉課)
 → 対象:障害者専用の福祉サービス
 → 申請:役所経由(受給者証が必要)

名前も目的も似ている。でも窓口が違う。知らなければ同じものに見える。「働く準備をしたい」と思ったら、ハローワークではなく役所に行く。 これだけ覚えておいてほしい。

職業訓練には受講条件がある

ハローワークが運営する障害者向け職業訓練(ハロートレーニング)には、受講するための条件がある。

・1日6〜8時間の訓練を継続して受講できること
・障害もしくは症状が安定していること
・集団生活(集団訓練)に適応できること
・日常的に介護や介助を必要としないこと

俺の考えはこうだった。「建設業ができなくなったから、新しいスキルを身につけたい」——これは至極真っ当な発想だと今でも思う。

でも担当者の判断基準は、別のところにあった。

制度上、職業訓練への参加には「ハローワークが再就職のために訓練が必要と認めること」が条件になっている。そしてその判断基準は「この人が訓練を受けて、本当に就職できるか」だ。

建設業一本・パソコン経験なし・下肢障害あり——この条件を並べると、担当者の目には「訓練を受けても就職につながる確率が低い」と映った可能性が高い。

俺は「スタート地点」を見ていた。担当者は「ゴール地点」を見ていた。 その視点のズレが、あの消極的な対応につながった。

悪意があったわけではない。担当者も制度の基準に沿って判断していた。ただ当事者からすれば、「新しいことに挑戦したい」という意志を最初から潰された感覚は残る。これもまた、制度の構造が生む問題だ。

なお、これは担当者の「裁量次第」でもある。同じ状況でも担当者が違えば「チャレンジしてみましょう」と推薦状を出すケースもあり得た。担当者の質のばらつきが結果を左右するという問題は、ここでも起きていた。

障害者がスキルを学びたいなら、就労移行支援の方が入り口が広い

ここが最大の皮肉だ。

俺がハローワークで断られた「パソコンスキルを身につけて就職したい」という目的は、就労移行支援がそのままカバーできる内容だった。

判断基準を比べると、この差は歴然だ。

職業訓練(ハローワーク)
 →「この人は訓練を受けて就職できるか」
  就職できる可能性の高さでふるいにかける
  担当者が「難しい」と判断すれば門が閉じる
就労移行支援(役所)
 →「障害がある・65歳未満・就職を目指している」
  この3つを満たせば対象になる
  スキルゼロでも、未経験職種への転換でも受け入れられる

さらに就労移行支援の事業所では、ITや簿記など実務で使えるスキルのトレーニングも行っている。「建設業しかやってこなかった人間がパソコンスキルを身につけたい」——その目的に、就労移行支援は正面から応えられる制度だった。

「障害者がスキルを学んで就職したい」と思ったら、ハローワークではなく役所へ。就労移行支援を使え。

俺がその順番を知っていれば、ハローワークで嫌な顔をされることもなかった。

なぜA型を勧めてくるのか——3つの構造的理由

ハローワークがA型を勧めてくるのには理由がある。個人の意地悪じゃなく、仕組みの問題だ。

① ハローワークの評価指標の問題

A型への紹介も「就職件数」としてカウントされる。担当者は成果を求められる立場にある。案内しやすいルートに自然と誘導される構造だ。

② 担当者の守備範囲の問題

ハローワークは「雇用」の窓口だ。A型は「雇用契約がある福祉サービス」なので、ハローワークの守備範囲として最も近い。就労移行支援や就労継続支援B型は「雇用契約なし」なので、ハローワークの担当外になりやすい。

③ 縦割り行政の問題

ハローワークと役所は別の省庁・別の管轄だ。ハローワークに受給者証を発行する権限はない。受給者証は役所(市区町村)の障害福祉課だけが発行できる。

ハローワーク
 → 厚生労働省「雇用」部門
 → 受給者証を発行する権限なし
 → 就職件数で成果を測られる
 → A型(雇用契約あり)が一番紹介しやすい
役所(障害福祉課)
 → 障害福祉サービス管轄
 → 受給者証を発行する唯一の窓口
 → 就労移行支援・A型・B型、全ての申請窓口

「お荷物扱いされた」のではなく、「ハローワークが扱いやすい選択肢がA型だった」というのが正確だ。

そして俺が後から知った最大の事実がある。

就労移行支援の申請窓口は、ハローワークではなく役所だ。

ハローワークの担当者が嫌な顔をしたのは、就労移行支援という選択肢を案内する立場にそもそもなかったからだ。担当者も制度の縦割りの中に閉じ込められていた。俺はそれを知らずにハローワークに行ってしまった。これが最初の失敗だった。


知らないと、言われたことが全部正しいと思って従ってしまう

ここが一番伝えたいことだ。

ハローワークの担当者は悪人じゃない。制度の中で与えられた役割をこなしていた。職業訓練を勧めなかったのも、A型を案内したのも、担当者の立場から見れば「普通の対応」だったかもしれない。

問題は、俺が何も知らなかったことだ。

何も知らない状態で窓口に行くと、担当者の言葉がすべて正しく聞こえる。「職業訓練は難しい」と言われれば「そうか、無理なんだ」と思う。「A型がありますよ」と言われれば「それしかないんだ」と思う。

疑う材料がない。比較する知識がない。だから言われた通りに動く。俺がそうだった。

後から調べて初めて分かったことがいくつもあった。

就労移行支援という選択肢が存在していた。就労移行支援の申請窓口はハローワークではなく役所だった。IT系に特化したA型事業所が全国にあった。在宅勤務に対応しているA型事業所も存在する。相談支援事業所は複数を比較して選べた。

どれも「知っていれば選べた」選択肢だ。知らなかったから、最初に案内された場所に行くしかなかった。

障害を持って制度の窓口に初めて行く人間は、ほぼ全員が「何も知らない状態」で行く。退院直後で体も頭も万全じゃない。不安の中で「とにかく社会復帰したい」という一心で動く。そういう人間が、知識を持った窓口担当者の前に立つ。

制度は、知っている人間に有利にできている。

これは陰謀論でも被害妄想でもない。単純な事実だ。知識があれば「それ以外の選択肢はないんですか」と聞ける。知識がなければ、その質問すら浮かばない。

だからこの記事を読んでほしかった。窓口に行く前に、地図を持っていてほしかった。担当者を疑えと言いたいわけじゃない。「他にも選択肢があるかもしれない」という視点だけ、持って行ってほしい。


本当の窓口は「役所(障害福祉課)」だ

ハローワークに行く前に、まず役所に行くべきだった。これが俺の最大の失敗だ。

就労移行支援・A型・B型、すべての障害福祉サービスの申請窓口は役所(市区町村の障害福祉課)だ。ハローワークではない。

就労移行支援を使いたい → 役所で申請
就労継続支援A型を使いたい → 役所で申請
就労継続支援B型を使いたい → 役所で申請
相談支援事業所を探したい → 役所でリストをもらう
受給者証が必要      → 役所で発行してもらう

「まず役所へ」——これが全ての起点だ。

ハローワークは、就労先が決まった後に求人を探す段階で使う窓口だ。俺は順番が逆だった。


相談支援事業所の正体

役所に行くと、相談支援事業所のリストを渡される。ここでもう一つ知っておいてほしいことがある。

「障害者に寄り添うために作られた」と説明される相談支援事業所。建前はそうだ。ただ正直に言う。

2012年に計画書の作成が義務化されるまで、役所が直接一人一人のサービス計画を作っていた。障害者が増えるにつれて役所の負担が限界になり、民間に委託する仕組みに変わったのが現在の相談支援事業所だ。

2012年以前
 → 役所が直接、障害者の計画を作っていた
 → 障害者が増えて役所の負担が限界に
2012年以降
 → 計画作成を民間の相談支援事業所に委託
 → 役所は審査・受給者証発行だけに集中

つまり相談支援事業所が生まれた背景には、役所の業務軽減という側面が間違いなくある。

「俺は社会復帰したいだけなのに、手順が増えただけじゃないか」というのが正直な感想だった(笑)。担当者の質にばらつきが出るのも、事業所によって紹介される選択肢が変わるのも、この構造上の必然だ。


相談支援事業所は「障害福祉版の不動産仲介業者」だ

賃貸マンションを借りるとき、仲介業者によって紹介できる物件が違う。「うちはこのエリアに強い」「このオーナーとパイプがある」——業者ごとに持っているネットワークが違う。

相談支援事業所もまったく同じだ。

事業所によって、繋がりの強い就労先(A型・B型・就労移行支援)が違う。国からの報酬という「仲介手数料」で成り立っている民間業者だ。どの就労先と繋がりが深いかは事業所によって全然違う。

どの相談支援事業所を選ぶかで、紹介される就労先が変わる可能性がある。

俺もハローワークでA型を勧められ、役所に行き、相談支援事業所と契約して、そこからA型事業所に繋がった。担当事業所にはIT系の就労先がなかった。後から調べたら存在していた。別の事業所を選んでいたら、違う就労先を紹介されていたかもしれない。

だからこそ、1か所で即決しないでほしい。

選ぶ基準はこの3つでいい。

チェック項目見るポイント
自分の障害の種類に対応しているか身体・精神・知的など、得意分野が事業所によって違う
自宅から通いやすいか体に障害がある場合は特に重要
電話応対が丁寧か「空きがないけど他の事業所を紹介しましょうか」と言ってくれる事業所は信頼できる

最初から特定の就労先ばかりを勧めてくる事業所には注意したほうがいい。合わなければ変えていい。

「変えられる」は権利だが、現実のハードルは高い

制度上、相談支援事業所はいつでも変更できる。手続き上は「いつでも可能」と明記されている。

でも正直に言う。これが言葉ほど簡単じゃない。

変更するには、役所に電話して、事情を説明して、新しい事業所を探してもらって、手続きをして——という流れになる。制度上は役所が動いてくれる部分もあるとはいえ、障害を持ちながらそれをやるのは、体力も気力も相当消耗する。

これは意志が弱いのでも、諦めが早いのでもない。単純に、消耗している人間には重すぎる手続きなんだ。

だから多くの人が、最初に案内された選択肢でそのまま決める。それが「普通の反応」だと思う。

変更を申し出ること自体は正当な権利だ。動き直す体力がある時、違和感が積み重なった時——「変えられる」という事実だけ、頭の片隅に置いておいてほしい。

【変更の正しい手順】
①まず役所(障害福祉課)に電話する
 「今の事業所と合わないので変更したい」と伝えるだけでいい
 → 役所は中立の立場で、地域の空き状況も把握している
 →「基幹相談支援センター」が設置されている自治体なら
   そちらに相談するとさらに手厚いサポートを受けられる
②役所の助けを借りて新しい事業所を探す
 自分で一から電話をかけ続ける必要はない
③受給者証の更新月に合わせると手続きがスムーズ

就労移行支援・A型・B型——違いを一気に整理する

就労移行支援

「働く準備をする場所」。一般企業への就職を目指す人向け。期間は原則2年間。給与はないが費用もほぼ無料だ。申請窓口は役所。

俺はここを使わずA型に直行した。後で知ったが、就労移行支援を経由すれば自分に合った就労先をもっと丁寧に探せた可能性がある。 ハローワークに行ったせいでこの選択肢の存在すら知らなかった。

就労継続支援A型

雇用契約あり。最低賃金が保証される。申請窓口は役所。

IT特化型・在宅OKの事業所も存在する。「今すぐ働きたい・働ける状態の人向け」。

俺が使ったのはここだが、担当の相談支援事業所にIT系のつながりがなかったため、選択肢が限られた。相談支援事業所選びが肝心な理由はここにある。

就労継続支援B型

雇用契約なし。工賃制。のんびりしたペースで社会参加できる。申請窓口は役所。

「まず外に出る練習から始めたい人」向けだ。


自分に合うのはどれか——判断基準を整理する

今すぐ働きたい・働ける状態
 → 就労継続支援A型
まず準備をしたい・一般就労を目指したい
 → 就労移行支援
体調の波が大きい・まず外に出る練習から
 → 就労継続支援B型
パソコンスキルを活かしたい
 → IT系特化のA型事業所を探す
体に障害があって通所が難しい
 → 在宅OKのA型事業所を探す
※どれを選ぶにしても、申請窓口は全て役所(障害福祉課)

IT系・在宅系A型という選択肢が存在する

ここを知らずに損した人間として、これは必ず書いておきたい。

全国に4,000か所以上のA型事業所があり、IT特化型も存在する。

できる仕事の種類(例)

データ入力・書類作成・Excel業務、Web制作・ホームページ制作、プログラミング(Python・PHP・Javaなど)、グラフィックデザイン・DTPデザイン、動画編集、SNS運用・ライティング

さらに在宅勤務OKの事業所も存在する。月1回だけ通所か訪問があれば、あとは自宅で働ける。

身体障害があってもパソコンが使えれば選択肢がある。 俺が当時知っていれば選んでいたかもしれない選択肢だ。


動き出すための3ステップ

ステップ1:役所(障害福祉課)に電話する

「就労支援のサービスを使いたい」と伝えるだけでいい。

どのルートを辿っても、役所は避けて通れない。「まず役所へ」——これが全ての起点だ。

窓口で「どんな選択肢がありますか」と聞けば、就労移行支援・A型・B型の説明と、相談支援事業所のリストをもらえる。ハローワークに先に行く必要はない。

ステップ2:受給者証の申請を始める

窓口に行ったついでに申請も始める。1〜2ヶ月かかるので、事業所探しと並行して動く。

ステップ3:気になる施設を見学・体験する

複数の事業所を見学する。雰囲気、スタッフの対応、どんな人が通っているか——実際に行かないと分からないことが多い。

1か所で決めなくていい。合わなければ変えていい。


俺がA型を辞めた本音

A型を辞めた理由は「合わなかった」の一言だ。元事業主として人を束ねてきた人間が、管理されたルーティン作業の環境に馴染めなかった。それだけだ。

辞めた選択が正解だったかは今でも分からない。でも「自分に合わないサービスを使い続けること」が正解でないことは、はっきり分かる。

制度は、あなたのために存在する。あなたが制度に合わせる必要はない。


まとめ:動く前に「地図」を持て

サービス申請窓口特徴
就労移行支援役所最大2年・費用ほぼ無料・一般就労を目指す
就労継続支援A型役所雇用契約あり・最低賃金保証
就労継続支援B型役所雇用契約なし・工賃制
相談支援事業所役所でリスト入手計画書作成・サービスの仲介役

ハローワークは「就職先の求人を探す場所」であって、障害福祉サービスの申請窓口ではない。

最初に役所に行く。相談支援事業所は複数を比較する。IT系・在宅系A型という選択肢の存在を知っておく。

それだけで、「選択肢があったのに知らなかった」という失敗は避けられる。

俺みたいになるな。


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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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