「後悔しない無敵の指南書 第二章②」——稼いだ後の人生設計編| 体が限界になる前に、次の手を打て——職人の出口戦略

あなたは今、現場の「出口」を考えたことがあるか。

「まだ動ける」「体はきつくなってきたけど、まだいける」「辞め時がわからない」——そう思いながら、なんとなく現場に出続けていないか。

俺がそうだった。考えていなかった。だから体に決めさせることになった。

現場を降りるタイミングは、自分で決めるか、体に決めさせるかの二択だ。

自分で決めた人間には選択肢がある。体に決めさせた人間には、選択肢がない。どちらになるかは、今日からの行動で変わる。


目次

家族に「辞めたい」と言う前にやること

家族がいる人間が、何の準備もなしに「体が限界だから仕事を辞めたい」と言っても、家族は不安になるだけだ。当然だ。収入の見通しがない、代替案がない、相談もなかった——この三拍子が揃えば、配偶者がパニックになるのは当たり前だ。

「辞めたい」ではなく「こう考えている」と言える状態で話せ。

転職・副業の準備は入念に。そして重要なのはスモールスタートだ。

ただし正直に言う。俺が推奨するクレーンオペレーターもボロ戸建て投資も、スモールスタートとは言いにくい。免許取得費用も、物件購入費用も、それなりの資金が必要になる。だからこそ事前の準備と家族の理解が必要になる。

では家族の信頼をどう得るか。方法はいくつかある。

① 計画を持って話す

「あと3年現場をやりながら〇〇の資格を取る。その後は〇〇の仕事に移る。その間の収入はこうなる」——ここまで話せれば、家族は安心して背中を押せる。準備もなく「限界だ」と言われた配偶者は反対する。計画を持って相談した配偶者は一緒に考えてくれる。同じ「辞めたい」でも、準備があるかないかで家族の反応が180度変わる。

② 副業でゼロイチを経験して見せる

いきなり大きな話をするより、まず副業で小さく稼いで見せる方が家族は安心する。副業は何でもいい。アルバイトでもいい。極端な話、月1万円でも「自分で稼いだ」という事実が大事だ。

ゼロから1を生み出す経験——これがゼロイチだ。

その小さな資金を少しずつ貯めて、次の転職や事業に活かしていく姿を家族に見せる。「この人は本当にやる気がある、ちゃんと動いている」という実績が信頼になる。言葉より行動だ。

断言する。簡単に稼げる副業など、この世に存在しない。

「簡単に稼げる」「月収100万円」「今だけ特別価格」——こういう言葉が出てきた瞬間に、それは詐欺だと思っていい。副業を始めるのに大金は必要ない。シンプルな労働から始めるのが一番安全だ。

③ まず家計管理を見直す

副業や転職の前に、今の家計を整理して見せることも有効だ。無駄な支出を削り、貯蓄が増えていく姿を家族と共有する。「この人はちゃんと考えている」という信頼が積み上がれば、大きな相談をしたときに聞いてもらいやすくなる。

出口戦略とは、自分のためだけじゃなく、家族を安心させるための設計書でもある。


なぜ「出口戦略」が必要なのか

建設業の職人は稼げる。腕があれば、どこへ行っても食える。それは本物の強みだ。

でもその強みには「賞味期限」がある。

体力勝負の仕事である以上、いつか必ず「降り時」が来る。問題はそれがいつ来るかわからないことだ。俺のように事故で強制的に降ろされることもある。加齢で少しずつ体が言うことを聞かなくなることもある。病気で突然動けなくなることもある。

「まだ動ける」と思っているうちが、実は一番動きやすい時期だ。

ピーク時には収入がある。信用力がある。体力がある。人脈もある。この4つが揃っているうちに次の一手を打てるかどうかで、10年後の人生が全部変わる。


「経験が活きる」と「適性がある」は別物だ

次のキャリアを考えるとき、多くの職人が「自分の経験が活きそうな仕事」を選ぼうとする。それ自体は正しい。

ただ俺が現場で何度も見てきた失敗がある。

「経験が活きる仕事」と「自分に適性がある仕事」は、全く別の話だ。

俺の知り合いに、足場の一人親方として長年稼いでいた男がいた。規模は大きくなかったが、腕は本物で、仕事には困っていなかった。ところが体力の限界を感じた頃、次の一手を何も考えていなかった。流れで、元請け会社の足場営業に転職した。

でもうまくいかなかった。リストラ対象になり、会社を去ることになった。その後、知り合いの伝手でまた足場の営業をしている。今も同じ不安を抱えたままだ。

現場職は、自分が動かなければ仕事が終わらない。足場を組まなければ足場は立たない。体を動かした分だけ結果が出る。

営業職は仕組みが違う。毎日契約が取れなくても、現場調査やルーティンの業務をこなしていれば給料が出る。この「動かなくても給料が出るシステム」に、職人出身の人間はだんだん慣れていく。

逃げで入った営業職を甘く見すぎているという話だ。

「体が楽になる」は本当だ。でも「仕事が楽になる」とは全く別の話だ。逃げで入った営業は、体は楽になっても精神が削れていく。

だから「経験が活きそう」「体が楽そう」という理由だけで営業職に流れるのは危険だ。自分の適性を冷静に見てから、次を選べ。


建設業経験が本当に活きる次のキャリア

では実際にどんな選択肢があるか。俺が「これは合う」と思うものを挙げる。

① クレーンオペレーター

俺が一番可能性を感じる選択肢だ。玉掛けの経験がある人間なら、クレーン操作の感覚は掴みやすい。力仕事ではないため体への負担が現場作業より少なく、年齢を重ねても長く続けられる。

吊り上げ荷重必要な資格取得費用の目安
1トン未満移動式クレーン運転業務特別教育約1〜2万円
1トン以上5トン未満小型移動式クレーン運転技能講習約3〜5万円
5トン以上移動式クレーン運転士免許(国家資格)約15〜18万円

本格的に独立してやっていくなら、5トン以上を扱える「移動式クレーン運転士免許」が必要になる。登録教習機関での実技教習が13〜16万円程度、学科・実技試験の受験料を合わせて合計15〜18万円が目安だ。

取得までの期間は、申し込みから免許証の交付まで平均1〜3ヶ月。現役中に計画的に動けば、仕事と並行しながら十分取得できる。

学科試験の合格率は65%前後、実技試験は70%前後。難易度は「普通〜やや易しい」レベルで、建設業の現場経験がある人間は感覚が掴みやすい。

独立だけがゴールじゃない。クレーンオペレーターは人手不足が深刻な職種で、資格を持って会社に転職するだけでも給料は悪くない。建設業経験者がクレーンの免許を取って転職すれば、体への負担が減りながら収入水準を維持できる。

現役で現場に出ている今が、クレーンのオペレーターと繋がりを作れる最大のチャンスだ。

一緒に現場に入ったオペレーターから話を聞き、情報を取り、パイプを作っておく。求人サイトで探すより、顔を知っているオペレーターから「うちに来ないか」と言われる方が圧倒的に転職しやすい。現場はただ働く場所じゃない。次の人生を準備する場所でもある。

② 内装・リフォーム業——そしてボロ戸建て投資へ

正直に言う。俺のイチオシはこっちだ。ただし、これはただの転職先の話じゃない。働きながらスキルを積んで、そのスキルで資産を作るという一連の戦略だ。

内装・リフォーム業は、建設業経験者にとって最も受け入れてもらいやすい業種の一つだ。体力的なきつさも重機系の現場より少なく、比較的長く続けられる仕事だ。

今の時代、内装・リフォームの基本的な技術はYouTubeで学べる。クロスの貼り方、フローリングの張り替え、簡単な水回りの補修——丁寧に解説している動画がいくらでもある。

そしてここからが本題だ。内装・リフォームのスキルと若い頃に稼いで貯めた資金を組み合わせると、独立とは全く別の、もっと強力な戦略が生まれる。

ボロ戸建て投資だ。

築古の戸建てを安く購入し、自分で内装を張り替えてリフォームし、人に貸して家賃収入を得る。場所を問わなければ、100万円台の物件はアットホーム・ホームズ・楽待などで今すぐ探せる。リフォーム費用100万円を加えても、月5万円の家賃で貸し出せれば表面利回りは20%になる計算だ。

ボロ戸建て投資は現金で買うことをお勧めする。銀行は築古の状態の悪い物件には融資しない。だから現金がなければ始められない。これが、現役中に稼いで貯めることの本当の意味だ。

最初に何をすべきか——まずアットホーム・ホームズ・楽待を毎日見ることだ。

欲しい車を探している時のように、毎日見ているうちに自然と相場感が身につく。これが最初の勉強だ。


出口戦略の具体的な進め方

難しく考えなくていい。今日からできることを順番に書く。

ステップ1:「いつまで現場に出るか」を決める

何歳まで、あるいは何年後までという目標を、まず自分の中で決める。漠然と「いつかは降りる」では動けない。

ステップ2:次のキャリア候補を2〜3個に絞る

経験が活きるかではなく、自分の適性に合っているかを基準に選ぶ。

ステップ3:必要な資格・準備を調べる

クレーンなら移動式クレーン運転士免許——目標が決まれば、必要な資格が見えてくる。現役で稼いでいるうちに取得する。

ステップ4:家族に話す

計画が固まったら、具体的な数字と見通しを持って話す。「辞めたい」ではなく「こう移行する」という言い方で。

ステップ5:お金の土台を作る

これは次回(第三回)で詳しく書く。現場を降りるタイミングを「自分で決める」ためには、お金の準備が必要だ。


まとめ

出口戦略は、逃げの話じゃない。自分の人生を、自分でコントロールするための話だ。

体が限界になってから動き出せば、選択肢は残っていない。ピーク時に動き出せば、選択肢がある。その差は、今日から考え始めるかどうかだけだ。

ここで気づいた人もいるはずだ。今回紹介したセカンドキャリアの二つ——クレーンオペレーターも、内装・リフォーム業からのボロ戸建て投資も——どちらも、軍資金があるかどうかで難易度が大きく変わる。

現役中に稼いで貯めることは、老後のためだけじゃない。セカンドキャリアの選択肢を広げるためでもある。

では、その軍資金をどう作るか。その話を、次回(第三回)で書く。


📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた
それでも俺は生きている ― ヘタな仮設屋の、笑えるけど刺さる30年 ―」をnoteで公開中です。
ブログではバラバラに書いてきた話が、時系列でつながります。

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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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