「後悔しない無敵の指南書3」——建設職人のための金と働き方の全知識| 保険と税金でむしり取られるな——建設職人が知らないまま損し続ける本当の理由

家計・税金・領収書のイメージ

正直に言う。

独立した頃の俺は、確定申告という言葉が怖かった。
何か間違えたら捕まるんじゃないか、税務署に目をつけられるんじゃないか——そういう漠然とした恐怖があった。

だから最初は税理士に全部丸投げした。「お金を払えば誰かが何とかしてくれる」という発想だった。

だが実際に仕組みを理解した時、拍子抜けした。

怖くなかった。むしろ、知れば知るほど「会社員より有利な部分がある」とわかった。

今回はその話を書く。保険と税金で損し続ける職人が、なぜ損するのか。そして何を知れば、同じ収入でも手元に残るお金が増えるのか。


目次

まず「国民健康保険」の罠を知れ

会社員は健康保険料を会社と折半する。個人事業主・一人親方は全額自己負担だ。しかも国民健康保険(国保)は、前年の所得をもとに計算される。

ここに罠がある。

稼いだ翌年に、まとめて高い保険料が来る。

例えば前年に売上が多かった年の翌年、突然「今年の国保は月3〜5万円です」という通知が来る。「去年は稼いだのに、今年は仕事が少ない」という時期に重なると、資金繰りが一気に苦しくなる。

俺も独立して数年は、この国保の請求に何度も驚かされた。前年の収入で計算されるという仕組みを知らなかったからだ。

対策は一つ——稼いだ年に、翌年の保険料分を先に確保しておくことだ。

「今年は稼いだ」と使い切ってしまうと、翌年の請求で詰む。職人がお金を貯められない原因の一つが、ここにある。


「所得税が怖い」は大きな誤解だ

確定申告を怖がる職人の多くは、「税金をたくさん取られる」と思っている。だがこれは大きな誤解だ。

個人事業主には経費という強力な武器がある。会社員は給与所得控除という一律の控除しか使えないが、個人事業主は実際にかかった費用を経費として計上できる。

建設業で経費になる主なものを挙げる。

  • 工具・道具の購入費
  • 作業着・安全靴・ヘルメットなどの装備品
  • 現場への交通費・ガソリン代・車両維持費
  • 携帯電話代(仕事で使う割合分)
  • 打ち合わせ・接待の飲食費
  • 資材・消耗品
  • 労災保険の会費・入会金
  • 確定申告のための税理士費用

これらを正しく経費に計上すれば、課税対象となる「所得」が大きく下がる。所得税は「収入」にかかるのではなく「所得(収入-経費)」にかかるからだ。

同じ収入でも、経費の使い方次第で払う税金は全然違う。

たとえば年収500万円の職人が経費を150万円計上できれば、課税対象は350万円になる。会社員で年収500万円なら給与所得控除は約144万円なので、課税対象は約356万円だ。さらに青色申告特別控除(最大65万円)を使えば、個人事業主の方が有利になる場面も出てくる。

「確定申告=税金を取られる」ではなく、「確定申告=自分で税金を計算して、払いすぎを防ぐ手続き」だ。


青色申告をやっているか

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がある。ほとんどの職人は白色申告で済ませているが、これは損だ。

青色申告には最大65万円の特別控除がある。年間65万円分、課税対象の所得が減るということだ。税率10〜20%とすると、それだけで年間6〜13万円の節税になる。

青色申告をするには、まず開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する必要がある。e-Taxで完結できるので、難しくない。

帳簿は会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を使えば、領収書を撮影するだけで自動的に記帳される。月数百円〜千円程度で使える。

年間6〜13万円の節税のために、月千円のソフト代を払う——これは十分すぎる投資だ。

税理士に頼むべきか、自分でやるべきか

このシリーズの読者なら、自分で申告した方が得だ。

税理士に確定申告を依頼する費用の相場は、年商500万円未満で7〜8万円、年商500万円〜1,000万円未満で10万円以上だ。一方、会計アプリの費用は年間1〜2万円以下。コスト差は年間6〜18万円になる。

専門家の見解では「年商1,000万円を超えたら税理士を検討すべき」というのが一般的だ。消費税の課税事業者になり、申告が複雑になるからだ。常用・請負の従業員形態で働いている職人が年商1,000万円を超えるケースはほぼない。

従業員として働いている間は、自分でやれ。自分でやることで収入・経費・所得の流れが頭に入る。それ自体が経営者としての力になる。

俺が独立した頃は税理士に丸投げしていたが、今思えば完全にコスト割れだった。仕組みを理解しないまま「お金を払えば何とかなる」と思っていた。そのせいで自分の経営数字をまったく把握できていなかった。


国民年金だけでは老後は足りない

このシリーズの指南書1で年金の未納リスクについて書いたが、受給できるとしても金額の問題がある。国民年金は月額保険料が約1万7,000円で、将来受け取れる年金は満額でも月約6〜7万円だ。

夫婦2人で月12〜14万円。これだけで生活できるか?できない、という人がほとんどだろう。

会社員なら国民年金に加えて厚生年金があるが、個人事業主にはそれがない。自分で老後の備えを上乗せするしかない。

① 小規模企業共済

個人事業主や小規模企業の経営者が加入できる「退職金」の積立制度だ。月額1,000〜70,000円の範囲で積み立てられ、廃業・退職時に受け取れる。最大のメリットは全額所得控除になること。月3万円積み立てれば年間36万円が所得から控除される。

② iDeCo(個人型確定拠出年金)

月々の掛金が全額所得控除になる老後の積立制度だ。個人事業主は月最大6万8,000円まで積み立てられる。60歳まで引き出せないという制約はあるが、節税しながら老後資産を作れる。

ただし——資金拘束は独立・起業の足枷になる

小規模企業共済もiDeCoも、資金が長期間拘束される。iDeCoは60歳まで引き出せない。小規模企業共済も途中解約すると元本割れのリスクがある。

若くて独立や起業を考えているなら、これを最初に優先するのは危険だ。独立には元手が要る。資金が全部拘束されていたら、いざという時に動けない。

優先順位はこうだ。

  1. まず現金で生活防衛資金を確保する(独立・起業の原資にもなる)
  2. 次にNISAで自由度のある積立をする(いつでも引き出せる)
  3. 収入が安定して独立の予定が固まったら小規模企業共済・iDeCoを検討する

保険料を「払いすぎていないか」も確認しろ

独立したての職人の中に、「民間の生命保険に毎月2〜3万円払っている」という人が多い。それが本当に必要な保障なのかを、一度見直してほしい。

保険は「万が一の時の補償」に特化させて、貯蓄は別で積み立てる——これが基本だ。

個人事業主に本当に必要な保険はシンプルだ。

保険料を見直すだけで、月1〜2万円浮くことがある。その分を積立に回した方が、長期的にははるかに大きな資産になる。


俺がやっておけばよかったこと

正直に書く。

独立してから廃業するまでの俺は、税金も保険も「何とかなっている」という感覚で動いていた。確定申告は税理士に丸投げで、中身を自分で理解しようとしなかった。国保が高い時は「仕方ない」と払い、保険料が重い時は「これが普通だ」と思っていた。

青色申告の控除も、小規模企業共済も、iDeCoも——全部知らなかった。

もし20代・30代の俺が今の知識を持っていたら、同じ仕事をしながら年間50〜100万円は税金と保険料を最適化できていたと思う。20年間でそれが積み上がれば、1,000〜2,000万円の差だ。知らないことは、それだけ高くつく。


今日からできること(具体的アクション)

① 確定申告を「白色」でやっている人は今すぐ青色に切り替える
開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する。e-Taxで完結できる。翌年の申告から最大65万円控除が使える。

② 経費になるものを全部把握する
工具・装備・交通費・通信費——仕事に関わる支出は全部領収書を保管する。会計ソフトを月1,000円以下で導入すれば、記帳の手間は大きく減る。

③ 国保の来年分を今年のうちに積み立てておく
今年の収入が多ければ、翌年の国保が上がる。「稼いだ年の20〜30%は翌年の税・保険料用に残す」という意識を持つ。

④ 小規模企業共済に加入する
個人事業主なら今すぐ検討する価値がある。月1,000円から始められ、全額所得控除になる。中小機構のサイトから申し込める。

⑤ 今の保険を見直す
毎月の保険料の合計を出して、「本当に必要な保障か」を確認する。不要な貯蓄型保険を解約して、掛け捨て+積立に切り替えるだけで資金効率が上がる。


まとめ

確定申告は怖くない。経費が使える分、会社員より有利な場面もある。怖いのは「知らないまま損し続けること」だ。

  • 国保は前年所得で決まる。稼いだ年に翌年分を確保しておく
  • 青色申告で最大65万円控除——やらない理由がない
  • 小規模企業共済・iDeCoで節税しながら老後を積み立てる
  • 保険は「補償に特化」させて、貯蓄と分ける

同じ収入でも、知っている人と知らない人では、手元に残るお金が全然違う。

次回は「稼いでも貯まらない理由」——現金収入の心理的な罠と、先取り貯蓄の考え方を書く。俺が20年間やっていた「使い残しを貯金と勘違いしていた」という話だ。


📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ

元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた「ヘタゴリラ一代記」をnoteで公開中です。
ブログではバラバラに書いてきた話が、時系列でつながります。

note: hetagorilla(ヘタゴリラ一代記)

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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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