後悔していた外貨建て保険——8年かけて、俺が出した答え

窓の外を一人で見つめる男性——後悔と決断

2018年から8年近く、俺はずっと迷い続けた。外貨建て保険を買ったことへの後悔と、「それでも解約に踏み切れない」という矛盾した状態の中で。

月に何度か保険会社から届く「契約内容通知書」を見るたびに、胃が重くなった。手数料がどれだけ引かれているか、為替がどう影響しているか、正直よく分からない。担当者に電話すれば教えてくれるのは分かっていた。でも電話したくなかった。なぜかというと、問い合わせたら「やっぱり後悔していた」を自分で認めることになるから。

それが2026年、ようやく変わり始めた。解約して学費に充てることを、俺はやっと決めた。ただし——まだ実際には踏み切れていない。

「後悔していた保険」を、子供の大学費用に充てていく——その決断だけは、ようやくできた。

目次

なぜ外貨建て保険に1,200万円を一括で入れたのか

俺が外貨建て保険を始めたのは2018年のことだ。

40歳のとき、足場から6メートル落ちた。脊髄を損傷し、廃業した。体が動かない、働けない、家族を養えるか分からない——そんな状態のとき、知人の紹介で保険担当者と会った。担当者は言った。「外貨建てなら利率が段違いです。円安が続けば元本以上に増える。老後の安心になりますよ。」

正直に言う。当時の俺は深く考えていなかった。手元に現金があって、どこに置けばいいか分からなかった。以前からお世話になっていた担当者だったので、言われるがままに任せた——それが実態だ。結果、妻の名義で9本の外貨建て終身保険に1,200万円を一括で入れた。今現在の解約返戻金は円安の影響もあって約1,780万円になっている。

以前の記事(障害後に1,200万円を外貨建て保険に突っ込んだ俺の後悔)では「後悔している、でもやめられない」で終わっていた。今回はその続きだ。

俺は「入る理由」しか考えていなかった。「いつ・何のために・どう解約するか」を一度も考えていなかった。

数字で見る外貨建て保険の実態

俺が持っている保険証券の解約返戻金明細表をもとに、実際の数字を出してみる。これは9本のうち1本のデータだ。

加入時の投資額(1本あたり):約133万円 ÷ 111円 ≒ $12,009

経過年数年齢解約返戻金(米ドル)日本円換算(111円)USD実質増加率
1年38歳$3,063約34万円−74.5%
3年40歳$10,611約118万円−11.6%
8年(現在)45歳$12,065約134万円+0.47%(8年合計)
10年47歳$12,694約141万円+0.56%/年
20年57歳$16,268約181万円+1.5%/年
30年67歳$20,738約230万円+1.8%/年

※日本円換算は加入時レート(1ドル111円)で計算。実際の受取額は解約時の為替レートで変わる。

見てほしいのは、ドルベースの数字だ。
加入から3年間は元本を大きく割り込む。8年経ってようやく元本とほぼ同水準。30年保有しても年利換算で約1.8%だ。

では「1780万円に増えた」のは何か。円安だ。
加入時1ドル111円台が、現在は最高160円台まで動いた。その為替差益が円換算の評価額を押し上げている。円高に戻れば、評価額は下がる。

これが良いか悪いかは、読者それぞれの判断に委ねたい。
ただ俺が伝えたいのは、入る前にこの数字を見ていたら、俺は判断が変わっていたかもしれないということだ。

比較のために書いておく。

選択肢リターンの目安主なリスク
外貨建て保険(30年)年利約1.8%(USD)為替リスク・解約控除
円建て定期預金年利0.1〜0.3%インフレリスク
高配当株(長期)配当利回り3〜5%株価変動・減配リスク
インデックス投資(長期)年利4〜7%(歴史的平均)株価変動・短期元本割れ

どれが「正解」かは、使う時期・目的・リスク許容度によって変わる。リスクゼロの選択肢は存在しない。違いはリスクの種類と、自分がそのリスクを理解して選んでいるかどうかだ。

では同じ2018年に、同じ$108,000をS&P500インデックスに一括投資していたらどうなっていたか。実際の年次リターンで計算してみた。

S&P500年次リターン保険(解約返戻金)
2018年−4.62%元本割れ(−74%)
2019年+31.26%元本割れ継続
2020年+18.59%ほぼ元本回復
2021年+28.54%微増
2022年−18.25%微増
2023年+26.15%微増
2024年+24.82%微増
2025年+17.68%微増

8年後の結果(ドルベース):

外貨建て保険(9本合計)S&P500一括投資(仮定)
投資額約$108,000約$108,000
8年後評価額(USD)約$108,585約$312,000
USD増加率+0.47%(8年合計)+189%(8年合計)
円換算(160円)約1,737万円約4,990万円

数字だけ見れば、差は歴然だ。

ただし、これは後出しじゃんけんだ。
S&P500は2022年に−18%の年もある。「1年で5分の1が消える」という局面を耐えられるかどうかは、人によって違う。2018年に一括投資していた人は、最初の年にいきなり−4.62%を経験する。長期で持ち続ける精神力が必要だ。

保険はその点、解約しない限り帳簿上の数字は下がらない。「安心感」には一定の価値がある。
大事なのは、この差を「知った上で選ぶ」かどうかだ。俺は知らずに選んだ。それが後悔の正体だと思っている。

後悔の正体——3つの判断ミス

① 「保険」を「投資」と混同した

外貨建て保険は、死亡保障と積立がセットになった商品だ。「増える」部分は確かに存在する。でもそこから毎月、保障コスト(いわゆる保険料)が差し引かれている。

俺は「円安になれば増える」という説明しか聞いていなかった。実際の手数料構造、死亡保障のコストがどれだけ引かれているかを理解しないまま入った。入ってから1年後に担当者に詳しく聞いて初めて知った。純粋な「増え方」は期待していたより小さかった。

「増える保険」は実在する。でも「何が増えて、何が引かれているか」を先に理解しないで入るのは絶対にダメだ。

② 解約のタイミングを決めずに入った

外貨建て保険には「解約控除期間」がある。最初の数年間に解約すると、受け取れる金額が大幅に減る仕組みだ。俺が入った商品も同じだった。「長期で持てば元本割れリスクは減る」と言われた。でも「長期とは何年か」「その後どう使うか」を何も決めなかった。

結果、最初の2〜3年は「いつ解約すれば正解か分からない」状態が続いた。保険が「宙ぶらりんの固定費」になっていた。毎月保険料だけが出ていくのに、使い道もなく、解約もできない——あの感覚は気持ちが悪かった。

保険は「入る日」より「解約する日」を先に決めるものだ。

③ 人生の底で長期の決断をした

廃業直後の俺は、精神的に限界に近かった。おむつをして、ナースコールを押して、介護されながら毎日を過ごしていた。「このまま家族に迷惑をかけ続けるのか」という罪悪感が、毎日頭を占めていた。

そんな状態で「老後の安心になりますよ」と言われたら、冷静に判断なんてできない。俺は「不安を埋めるために」保険に入った。それが本当の理由だ。担当者が悪人だったとは思っていない。俺の判断力が、あの時期にはなかった。

人生の底にいるとき、長期の金融商品を決めるのは難しい。「安心したい」という感情が判断を歪める。

2026年、解約を決意した。でも、まだ踏み切れていない

長男が今年、高校1年生になった。双子の次男・三男は中学2年生だ。子供3人分の教育費が、今まさに本格化する時期に入ってきた。

俺の月収は今、障害年金1級・労災年金2級・就業不能保険の3本立てで月約50万円ある。でも就業不能保険は62歳で終わる。月約20万円の収入が消える崖が来る(62歳で月20万円消える——俺の収入の崖と対策 でも書いた)。今の月余剰は約10万円で、子供3人分の大学費用を全額賄うのは厳しい。

だから外貨建て保険を少しずつ解約して大学費用に充てていく——それは決定事項だ。子供の進学スケジュールに合わせて、毎年1〜2本ずつ解約していく計画を立てている。

ただ、なかなか踏み切れていない。理由は2つある。

ひとつは為替の見極めが難しいことだ。加入時は1ドル111円台だった。今は最高160円台まで円安が進んでいる。「今が解約のタイミングかもしれない」と思いながら、「もう少し待てばどうなるか」という迷いが常にある。為替リスクを意識せずに入ったのに、今度は解約タイミングの為替リスクと向き合っている。これが外貨建て保険の本質だと、身をもって理解した。

もうひとつは感情的な踏ん切りだ。解約するということは、「あの判断は失敗だった」を自分で認めることになる。それが分かっていても、手が重い。

「解約=失敗」ではない——保険を使い倒す視点

俺がこの記事で言いたいのは「外貨建て保険はダメ」ということじゃない。

問題は商品そのものじゃなく、「入ったあとの使い方の設計がなかった」ことだ。外貨建て保険は「子供の学費」「住宅の頭金」「老後の一括費用」のように、「いつ・いくら・何に使うか」が決まっている人なら向いている商品だ。俺みたいに「老後の安心」という曖昧な目的で入ると、出口が見えなくなる。

保険は入ること自体が目的じゃない。「使い切ること」が目的だ。

「なんとなく続けている保険」が、一番もったいない。

今日からできること——保険を正しく使い倒す3ステップ

ステップ1:解約返戻金を今すぐ確認する

保険証券を引き出して、「今解約したらいくら戻るか」を担当者に電話一本で確認しよう。この数字を知らないまま放置しているのが一番まずい状態だ。「なんとなく損しそう」と思って後回しにしている人ほど、確認すると意外とダメージが少ないケースもある。まず数字を知ることだ。

ステップ2:「いつ・何に使うか」を書き出す

子供の学費なら「いつ高校入学か」「大学入学はいつか」。老後の費用なら「何歳から・何に使うか」。曖昧でいいので、用途と時期を書き出す。「なんとなく老後に」という曖昧な目的が、後悔の一番の原因になる。

ステップ3:解約控除期間が終わるタイミングを把握する

外貨建て保険の解約控除期間は商品によって異なるが、一般的に10〜15年程度かかるものが多い。解約控除期間が終わっている商品から順番に解約するのが損を最小化する基本だ。使う時期の1〜2年前に現金化しておくと、為替の動きも見ながら動けて余裕がある。

俺が気づいた「運用期間」という視点

この経験を通じて気づいたことがある。投資の選択は「何を選ぶか」より「何年スパンで使うお金か」で変わる。

15年以上使わないお金なら、高配当株やインデックス投資でリスクを取れる。でも10年以内に使う予定のお金では、株式の値動きリスクを吸収しきれない。「では貯金か保険か」となるが——貯金はインフレに食われるリスクがある。外貨建て保険は為替リスクがある。どちらも「リスクなし」ではない。リスクの種類が違うだけだ。

俺が後悔しているのは「外貨建て保険を選んだこと」より、「期間と目的を曖昧にして選んだこと」の方が大きい。入口で「いつ・何のために・どう解約するか」を決めていれば、今ほどの迷いはなかったはずだ。

そしてこの経験が、俺を高配当株投資に向かわせた理由でもある。円でもらえる配当金は、為替リスクがない。「解約タイミングを読む」必要もない。毎年・毎月、少しずつ配当という形で受け取れる。複雑なことを考えなくていい。俺にはそれが合っていた。

実際の数字を出す。俺の高配当株ポートフォリオの現状だ(2026年5月時点)。

項目高配当株(実績)外貨建て保険(参考)
投資額(購入額)約2,415万円1,200万円
現在の評価額約3,756万円約1,780万円(為替込み)
損益+1,341万円(+55.53%)USD実質+0.47%(8年)
年間インカム(税引後)約94万円なし(解約時のみ)
為替リスクなし(円建て)あり(1ドル111円→160円台)
解約タイミングの判断不要(配当を受け取るだけ)必要(為替を読む必要あり)

これはあくまで俺個人の実績であり、高配当株が誰にでも正解とは思っていない。
ただ、「為替を読む必要がない」「解約タイミングを考えなくていい」という点が、俺の性格と状況には合っていた。毎月配当が入ってくる安心感は、保険とはまた違う「確かさ」だ。

まとめ——後悔は「使い倒す」ことで回収できる

8年近く引きずった「後悔の保険」を、子供の大学費用に充てることを決めた。やっと使い道が決まって、俺は少し楽になった。実際に解約するのはこれからだが、向き合う気持ちだけは固まった。

大事なのは「入った選択が正しかったか」より「今持っている保険をどう使い切るか」だ。入った過去は変えられない。でも使い方は、今から変えられる。

後悔したまま放置するのが、一番損だ。


📖 俺のこれまでの全記録を読みたい人へ
元職人→廃業→障害→どん底→投資で4,000万円——
この軌跡を一本のストーリーとしてまとめた
それでも俺は生きている ― ヘタな仮設屋の、笑えるけど刺さる30年 ―」をnoteで公開中です。
note: hetagorilla

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この記事を書いた人

元・建設業の個人事業主。現在は障害年金・労災年金・就業不能保険を活用しながら、配当金を軸に“無理のない自立生活”を目指す50代男性です。
配当投資、住宅ローン、保険の見直しなど、障害と向き合う中で学んだ「お金と生き方」のリアルを発信しています。

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